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UPDATE|2024/03/07

作家・草凪優が今、アイドルを官能小説の題材にする理由「基本的には禁じ手、時代が変わって共感」

『どうしようもない恋の唄』(祥伝社文庫)は一般映画化。幅広い層にファンを持つ草凪優氏。撮影:sacocamera @sacocamera



「結局は愛なんですよ。官能小説でよくある、好きで好きで仕方ないから、拉致して監禁して凌辱する、とかっていうのも正面切って言えないだけで本当は愛がベースにある。ただ、いまの世の中を考えた時に、そういうストーリーは厳しい。読んでいてストレスになるので。

けれども凌辱であろうとも、官能小説のベースは愛。SMを題材に扱った小説として有名な団鬼六の『花と蛇』は、静子夫人っていう、ひとりの女性をメインヒロインにして9巻まででてるんです。そんなの純愛以外の何物でもない。けれども一方で、これまでは官能小説は、愛を隠してきた。当たり前すぎるというので夫婦間のセックスはご法度だし、カップルのセックスも官能のセオリーにはない。けれど僕はそこに挑戦していきたい。そういう禁じ手に挑めるのは俺くらいだしね」

その両想い同士のセックスシーンは、読めば股間が熱くなるばかりではなく、胸がキュンとなり、純愛に身を投じる乃愛の健気さゆえに、濃厚なセックスシーンがあってもヒロインのピュアさがより際立つ。

「今作は従来の、アイドルがヒロインの官能小説とはちょっと違って愛があるから、アイドル好きな人が読んでも安心、嫌な気持ちにはならない作品です。すごいエッチなことをしているけれども、愛しあっている同士なんだから、どれだけエッチなことをしてもいいと思う。それにアイドルだって人間だから、恋人だってできることがあってもおかしくないし、いつかは結婚だってするし、誰だって宝くじに当たる場合はある(笑)。推しのことを考えながら読んでいただいて、ぜひ宝くじに当たった気分を味わってもらいたいですね」

官能としても、純愛小説としても読める『人妻アイドル』。読めば甘く狂おしいひとときの夢を見ることができるのではないだろうか。

▽『人妻アイドル』草凪優 著 徳間書店 刊
スナックのママのヒモをしている沢野由起夫は、テレビの報道に唖然としていた。〈人気アイドル鈴森乃愛、隠し子と夫の存在をカミングアウト!〉記者会見で知っている女が頭を下げていた。躍るテロップとまばゆいフラッシュの嵐のテレビ画面に映るのは、一年前に別れたはずの妻だ。乃愛が会見で「夫」と呼んでいるのは、他ならぬ俺のこと……。「つまり、あの離婚届は出さなかったのか? いったいなぜ?」――芸能界に翻弄されるカップルの激動純愛を描く官能ロマン。アイドル、人妻、1児の母、スキャンダラスな芸能世界を官能小説の名手が描く! 

▽草凪優(クサナギ ユウ)
1967年、東京生まれ。日本大学芸術学部中退。シナリオ・ライターを経て、2004年『ふしだら天使』で官能作家としてデビューする。2005年『桃色リクルートガール』で官能文庫大賞、2010年『どうしようもない恋の唄』で「この官能文庫がすごい!」大賞を受賞する。2018年、「裏八重洲本大賞」を受賞。Xアカウント:@kusanagiyuu

【あわせて読む】人気・実力ともに随一、官能小説界のエース作家・草凪優がいまプロレス小説を書いた理由

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