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UPDATE|2022/04/10

人気・実力ともに随一、官能小説界のエース作家・草凪優がいまプロレス小説を書いた理由

3月22日に発売となった草凪優氏のプロレス小説『ラストバトル プロレス哀歌』

官能小説の第一人者・草凪優氏が、このたび本格的なプロレス小説『ラストバトル プロレス哀歌』(竹書房)を出版した。もともと草凪氏は自著『どうしようもない恋の唄』(祥伝社文庫)が一般映画化されるなど、女性も含めて幅広い読者層から支持されてきた官能作家ではある。草凪氏に、いまプロレス小説を書いた理由を聞いた。

【写真】レジェンドたちが集結、新日本プロレスの『旗揚げ50周年記念日』の模様

「昔から大好きだったプロレスの小説を書ける。これって僕にとっては、お金うんぬんの問題じゃないわけですよ。正直、この本を完成させる時間があれば官能小説だったら5~6作は書けていた。じゃあなぜ執筆に取り組むかと言えば、やっぱりそれは若い頃に自分がプロレスに触れて味わった感動をどうしても伝えたかったから。これまで官能小説を200冊以上は出版してきたし、これからも間違いなく書き続けるでしょう。“脱・官能”なんていう気は毛頭ありません。でも、損得勘定じゃ決して割り切れない熱い気持ちが今年55歳になる僕にだってあるんです」

 草凪氏がプロレスに出会ったのは小学生時代までさかのぼる。ザ・ファンクス(ドリー・ファンク・ジュニア&テリー・ファンク)VS.ブッチャー&シークの流血戦に熱狂したのが原体験だった。それと同時に規格外の身長を誇るジャイアント馬場の存在感にも度肝を抜かれる。プロレスが持つ見世物小屋的な禍々しさには、有無を言わせぬインパクトがあったという。

「全日本プロレス一辺倒というわけじゃなくて、UWFみたいに頭脳を駆使したプロレスも好きでした。なにしろ前田日明さんは弁が立つから、イデオロギー的な部分で惹きつけられるものがあるんですよ。その対極にあるのが(三沢光晴、川田利明、田上明、小橋健太による)寡黙な四天王プロレス。余計なことを言わず、淡々と殺し合いするような試合は最高でしたね。僕自身、その前の超世代軍も含めて絶大な影響を受けましたから」

 超世代軍や四天王プロレスの全盛期、草凪氏は20代半ばだった。学生結婚して大学を中退したものの、安月給で不本意な仕事を余儀なくされる毎日。妻が精神疾患で実家に戻ったのもあって、陽当たりゼロの薄暗いアパートの部屋で、未来に絶望していたという。ある日、拾ってきた埃まみれのブラウン管から流れてきたのが超世代軍の無謀ともいえる突貫ファイト。それは暗闇の中でもがき続けていた青年にとって、わずかに見えた希望の光だった。一念発起した草凪氏はシナリオコンクールに応募し、見事に入賞。小説家になる足掛かりを掴んだ。

「今のプロレスですか? あまり熱心ではないですが、まあ見ています。僕はゴツゴツ武骨な四天王プロレスに心酔していたから、心情的に言うと今のキャラクターを重視した新日本プロレスを認めたくはないんです。外道選手のプロレス観と相容れないと言いますか(笑)。だけど実際に見たら面白い試合もたくさんあるので、そこは評価せざるをえない。少なくてもクオリティはすごく高いと思います。話は飛びますが僕は乃木坂46の狂信的なファンでもあるので、他の坂道シリーズに対抗心がある。でも、欅坂46(現・櫻坂46)はあきらかに曲やパフォーマンスがいいし、日向坂46のハッピーオーラに癒されることもある。“好きになりたくないけど好きになってしまう”という屈折した感情を抱えています」
AUTHOR

小野田 衛


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