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UPDATE|2022/07/15

SKE48赤堀君江「覚悟って何ですか?」二人きりのダンスバトルで牧野アンナ先生が教えてくれたこと

SKE48チームS 新オリジナル公演「愛を君に、愛を僕に」 (C)2022 Zest, Inc.



赤堀は先生に反発していたわけではない。ただただ正解が分からなかった。
他のメンバーが対面で1曲通すと、赤堀は牧野に歩み寄った。

「やり方が分からなくて、どうしたらいいか分からなくてやめてしまったんですけど、もう一回やらせてほしいです。お願いします」

深く頭を下げると、牧野は「私とやろう」と、赤堀と向かい合うことになった。それは傍から見ると対決のようだった。取り囲むようにして見守る同じチームのメンバーに緊張が走る。音楽が流れる。2人は感情に任せて踊り始めた。牧野の表現は流石の一語だった。リズム感、体の使い方、感情表現、サビに向けての展開など、手本そのものだった。一方の赤堀は、動きが小さく見える。両者の差は一目瞭然だ。

しかし、赤堀はその時間を心から楽しんでいた。このレッスン期間中、自身を苦しめていた疑問の1つが氷解していくのが分かった。

赤堀「先生の動きを見ているだけで楽しくて! 『わー、すごいなー』と思っていました。踊りながら、心から表現するってどういうことか、分かった気がしました」

赤堀にとって、その数分間はかけがえのない財産となった。先生の踊りを正面から独占できたのは世界中で赤堀しかいなかった。先生は赤堀の目を見て、赤堀のために踊っていた。「分からない」を連発する生徒への解答を体で示した。

5月28日。本番の幕が開くまで10分前というタイミングで、牧野アンナがSKE48劇場の楽屋にやって来た。そこで最後のメッセージを送った。

赤堀「先生は優しかったです(笑)。先生は『君たちはここまでよくやってきた。もし成功しなかったら小室哲哉と牧野アンナのせいだ』と言っていました。よし、ここまで来たら、やってやるよ。もし初日がコケたら先生のせいにしちゃおうって思いました、言い方は悪いけど(笑)。今まで悩んでいたことはいったん置いておこうって」

赤堀は自分でも気がつかないうちに腹をくくっていた。幕の向こうからファンの拍手が聞こえてきた。周りを見ると、何人かのメンバーは泣いていた。新しいチームSが始まる。赤堀はそのことにワクワクしていた。

幕が開く。メンバーが客席に振り向いて1曲目が始まった。赤堀は生き生きと踊り出した。長くて暗いトンネルの出口をようやく見つけた顔をしていた。

次の日、同期4人で焼肉を食べに出かけた。「やっと終わったね。でも、ここからがスタートだよね」としみじみと話した。仕事の話を同期と交わしたことはなかったが、自然とできるようになっていた。そんな自分が少し嬉しかった。

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CREDIT

取材・文/犬飼華


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