世界一かわいいカリスマvs世界一性格の悪い男。
ベルトがかかるわけでもなければ、メインイベントでもないけれど、これはまさしく「世界一の闘い」。実際、ふたりとも海外でも評価が高く、伊藤はアメリカ遠征から帰ってきたばかり。文字通り、世界標準の一騎打ち。ニッポンの国技の殿堂から世界に発信する最上級のシングルマッチだ。
当初のプラン通り、伊藤麻希&鈴木みのる組が実現していたら、間違いなく大盛りあがりの鉄板カードになっていただろう。年間最大のビッグマッチを飾るお祭りマッチとしては大アリだったと思うけれど、そんな予定調和に押しこんでしまうのはもったいない。
事実、いまのところ、伊藤麻希vs鈴木みのるがどんな試合になるのか、誰ひとりとして想像がついていないはず。おそらく伊藤麻希自身もわかっていない。これは伊藤麻希に、東京女子プロレスに、いやプロレス界全体に鈴木みのるが投げかけた大いなる謎かけだ。試合開始のゴングが鳴るまですべてはベールに包まれているし、試合終了のゴングが国技館に響き渡る瞬間まで答えは見えてこない。令和のプロレスではあまり見かけない「考える余白」がありまくりの一戦はリアルタイムで観戦してこそ、衝撃も感動も驚きも味わえるはずだ。
しかし、伊藤麻希という人は本当に面白い。
現役アイドル兼プロレスラーたちがタイトルマッチという超王道な晴れ舞台を踏む両国国技館で、元アイドルの伊藤麻希は男子も女子も、日本も世界も、ありとあらゆる枠組みを超越した試合に臨む。世界一、という冠には「世界でいちばん」だけでなく「世界で唯一」の意味もきっと内包されている。世界広しと言えども、伊藤麻希にしかできない闘いというものがある。それはこれまで東京女子プロレスのリングで幾度となく展開されてきたが、今回はそれを凌駕するような一戦になりそうな予感がプンプンする。
13年前、HKT48を書類審査で落とされた女が、プロレスラーとして両国国技館のリングで未踏の境地へと足を踏み入れる。アイドルだったら、絶対に味わえなかった世界がそこにはあるーー。
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