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UPDATE|2022/05/14

国際政治学者・三浦瑠麗が語る“不倫”の本音と建前「全部が建前だと不健全な社会になる」

三浦瑠麗 撮影/松山勇樹



──どうして著名人のモラルが問われるようになったのでしょうか?

三浦 フェミニズムからする妻の地位の保全は一つありますね。少なくともちょっと前までは浮気をするのは圧倒的に男性の側でしたし。ただ、それだけではありません。政治家や芸能人などの著名人は、かつては自分と縁のない世界の住人だと考えられていた。それが、演出の観点からも、人々の肌感覚としても、普通の人とさほど変わらない人間だと見なされるようになると、中産階級のモラルを守って生活すべきだという圧が生じる。

「みんなおなじ」では全くなかったはずが、「みんなおなじ」でなければならないという、まあある意味で平等化が進んだ結果の副産物なんでしょうね。政治家は公職だからバッシングされてもしょうがないと思う人も多いだろうけど、たとえば歌舞伎役者や噺家さんまで、不倫が報じられるとダメージを受けるようになってきているんですよね。

──女遊びは芸の肥やしというのも、今は通用しないですからね。

三浦 まあ、その女遊びという陳腐化した表現自体は、私はどうかと思いますけどね。本気でする恋愛は、不倫だろうが純愛だろうが、その人をどこか変えるものです。かつての日本語的な意味で「遊ぶ」のにもエネルギーが必要です。本気で面白がったり悲しんだり喜んだりする感情の起伏は、恋愛や性愛に限らず、人間を生き生きとさせますからね。

不倫そのものを肯定しているんではなくて、人間はそういう生き物だということです。日本社会と言うのは面白くて、本音と建前をうまく使い分ける。ラブホテルがこれだけ林立している国で、芸能人の不倫スキャンダルや、くっついた離れたを批判するわけですから。本音と建前の区分けが成立している間はまだいいのかもしれませんが、全部建前しか許されないとすれば不健全な社会になるだろうと思います。

【後編はこちら】国際政治学者・三浦瑠麗が語る“フェミニストと不倫”の今後「あらゆるものを排除していいのか?」
AUTHOR

猪口 貴裕


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