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UPDATE|2024/03/29

“推し”が不祥事を起こしたらどうする?作家・雨宮処凛が綴る「推しのやらかし」

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さて、ここまで見て、どれくらいの人が事件の詳細を覚えていただろう? 「数年ぶりに思い出した」という人も多いのではないだろうか。多くが未だ活動復帰とはなっていないが、その中で、びっくりするような例外がある。

それは東国原英夫氏。

98年、風俗店で未成年のサービスを受けたことが発覚、「淫行疑惑」と報じられたのだ。本人は未成年とは知らなかったというが、令和の現在、「淫行」「未成年」と報道されればどんな言い訳をしてもアウトではないだろうか。が、その後、謹慎を経て復活。それどころか宮崎県知事にまで登りつめており、今も「ご意見番」的にメディアに登場し続けている。これを非難する声も特にない。

芸能人のこのような問題を考える時に納得いかないのは、こういったダブルスタンダートがまかり通っていることだ。ある人は許され、ある人は徹底的に叩かれる。基準がはっきりしていればいいものの、なんとなく「時代」やキャラといったもので許されたり許されなかったりするおかしさ。明確な基準がないからこそ、時に誰かはリンチされ、誰かは無罪放免される。

さて、それではもっとも「推される」立場であるアイドルに目を向けてみると、加害よりは圧倒的に「被害」が浮かび上がる。

それは、ジャニー喜多川氏による性加害問題が昨年大きな注目を集めたからだ。多くの被害者が名乗り出て、事態は日々動いていった。

被害を受けた人々の苦しみは想像することしかできないが、一方で、ジャニーズファンも苦悩していた。

「自分が応援してきたことが加害にどこかで加担していたのでは」「このままファンを続けていいものなのか」等々。何十年も前から噂になっては消え、ということを繰り返していただけに、「自分は見て見ぬふりをしいてたのではないか」という自責の念を覚える人が多かったようである。

私自身もバンギャ30年以上という推しのいる身。とても他人事とは思えなかった。

そんな自分の推し遍歴を振り返ると、推しの性加害はないものの、いろいろなことがあった。

例えば中学時代の89年には、当時大ファンだったBUCK-TICKのギタリスト・今井寿氏が麻薬取締法違反で逮捕という大事件が起きている。バンドは人気絶頂だっただけに、当時の音楽雑誌には裁判の様子までもが赤裸々に綴られ、裁判に傍聴に行ったファンの声なども紹介されていた。

翻って、現在。芸能人が薬物で逮捕となると非常に厳しい目が向けられ、復帰も難しいイメージだが、当時はまだまだゆるかった(ミュージシャンということもあるのかもしれないが)。逮捕されたのは4月なのだが、執行猶予がついたため、その年の年末には東京ドームのライブで復活。以降、テレビなどのメディアにも逮捕前と変わらず出演していたことを記憶している。

ちなみに「芸能人が薬物で逮捕」については、のりピー以降、異様に厳しくなった感がある。よって、私はそれを「のりピー以前・のりピー後」と呼んでいる。紀元前・紀元後みたいな使い方だ。


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