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UPDATE|2024/03/01

Z世代が観た『不適切にもほどがある!』、新・SNS時代に考えたい"想いが宿る"コミュニケーション

『不適切にもほどがある!』公式HPより



だがこの微々たる変化に対応するのは、よっぽど普段からSNSを使いこなしていないとかなり難しいだろう。第4話の放送を見て「今の時代はこういうものなのか」と気づかされた人や、連絡を取り合うためにSNSをしているのに返信をしないとはどういうことなのか、と理解に苦しむ人もいたかもしれない。一つ言えるのは、もう、誰もSNSの正しい使い方なんて分からないということだ。

生まれた時からスマートフォンの存在があり、幼い頃からSNSに触れている世代は「SNSの正しい使い方」を改めて考える機会は少ないだろう。SNSによってチャンスをつかんだ人もいれば、デジタルタトゥーに苦しめられている人もいる。だが、SNSという大海原の中で「チャンスをつかむ投稿」と「デジタルタトゥーとなる投稿」はおそらく紙一重であり、その違いを根拠を持って説明できる人は少ないはずだ。

そんな混純したSNS時代を過ごしてきたキヨシ(坂元愛登)は、昭和にタイムスリップしSNSのない時代で暮らしている。早々に「面白くない」とスマホを手放し、黒電話、駅の掲示板など昭和ならではのコミュニケーションツールを使うようになった。「スマホがなくても純子に会えた」と興奮する姿は、この時代の”待ち合わせ”にある運命的な要素を感じさせた。

そんな中、不登校のクラスメイトとのコミュニケーション方法に頭を悩ませたキヨシは、ラジオへハガキを送ることを思いつく。せっせとハガキを書くキヨシに純子(河合優実)は思わず「ものすごく効率悪いぞ」とツッコんだが、キヨシは「インスタとかXみたいに向こうの負担にならない連絡の取り方って思いつかなくて…」と呟くのだ。

「インスタとかXは向こうの負担にならない連絡の取り方」というかなり令和的な価値観を持つ少年が考えた「ラジオにハガキを送る」というコミュニケーション方法。正直「間接的すぎて負担にならないどころか伝わらないのでは」と斜に構えてしまっていた。だが、机に並べられた大量のハガキを見ていると、公共の電波を使って特定の一人にメッセージを伝えるなんて、これこそが真の”エモさ”なのかもしれないと思ってしまった。

そしてなんだか、ハガキを書いてポストに投函するという行為は、実はSNSよりもとても密で直接的なコミュニケーションなのではないかと感じた。どうかあの人が出てくれますようにと願いながらダイヤルを回す瞬間、手紙が届いていないかと郵便受けを確認する時など、メッセージを届けるまでの時間や、受け取るまでの時間に想いが宿っている気がするのだ。

手先を動かせば気軽に言葉を届けられるこの時代。誰に見られるか分からない駅の掲示板や、親が出るかもしれない家の電話に比べ、メッセージを伝えるというハードルはグンと低くなった。その気軽さがSNSの魅力でもある。でも、大切な人に本当に大切なことを伝える時、SNSは少々頼りないときもあるのかもしれない。

今から10年、20年経てば、新たな価値観の元、今とは違うコミュニケーションツールが生まれているはずだ。もしかしたら、過去や未来とつながれる、そんな魔法みたいなツールが生まれているかもしれない。それがどんなものであれ、どうか伝えたい人に伝えたいことが真っ直ぐに伝わるツールであってほしいと思う。

【あわせて読む】Z世代が観た『不適切にもほどがある!』、令和の”違和感”の正体とは一体何なのか
AUTHOR

音月 りお


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