心の中では声優になりたい気持ちがありつつ、自分には無理だという葛藤を抱え続けて成長していく。転機は大学2年生の終わり、卒業後の将来を考え始めた時期にこのまま夢を諦めるべきかどうかと迷いが生じた。
「就職活動を始めたらチャレンジもできなくなるだろうし、その前に当たって砕けろという気持ちが芽生え、1年間だけ声優の勉強をしようと決めました。本棚で眠っていた資料を取り出して、その中から選んだ声優養成所に通い始めました。
大学にも通いながらだったんですけど、お芝居がとにかく楽しくて結局1年では辞められずに、もう1年通って。その間に『このままお芝居を続けていきたい』と思うようになり、親にも就活はしないと伝えました」
容姿に自信が持てないという理由から、顔を出して芝居をする俳優には抵抗があったという上田。だが、大学在学中に舞台を経験して考え方が変わっていった。
「声優もお芝居することには変わりないから、レッスンでエチュードをやったり、大学4年生の終わりに舞台に立ったりしていたんです。そこで顔出し云々に関わらず、お芝居そのものが楽しいなと思うようになって。
声優として養成所から上がることができなかったのもあり、俳優の道にも挑戦してみようと思って、大学卒業と同時にプロダクションに入り、エキストラや朗読劇のお仕事をいただくようになりました」
俳優の道を選んだことには親も好意的だった。たが、漫然とやるのはやめようと、自ら目標を課した。
「舞台でも映像でもいいから、25歳までに主役かヒロインを演じることができなかったら辞めようと決めていました」
最初に所属した事務所は、規模が大きく所属タレント数が多いのもあり仕事に恵まれなかった。小さい事務所に移籍後も、オファーが来る仕事はエキストラや舞台の端役と、目標には程遠かった。
「事務所を移籍したけど、大きく状況は変わらずでした。しかも私が24歳のときに突然事務所が解散することになり、フリーになることを余儀なくされたんです。多少はもらっていたお仕事もゼロになって……。自分の力でどこまで行けるかと腹は括ったものの、正直『詰んだな』という気持ちでした」