「いつぐらいからですかね、自分の中でここまで歴史をつくってきたグループの10周年は見届けたい、という気持ちが大きくなってきたんですよ。だから、本当は10周年記念公演が終わってから発表して、今年の年明けには卒業するつもりでいたんです。
ところが10周年記念公演のサプライズで、2021年4月からツアーの開催が決定って発表されたじゃないですか? 私、あの告知映像をステージの上で見ながら『あぁ、これは出たいな』って思っちゃったんですよ。まだ卒業を発表したわけではなかったので、いくらでも変更できるじゃないですか(笑)。それでスタッフのみなさんと話し合って、ツアーが終わってから卒業します、ということに決まったんです」
ツアーがはじまる前に取材をしたとき、すでに松岡菜摘の言動は変わりはじめていた。このツアーではいろいろなことを後輩に任せたい、と言い、さらには「入ったばかりのころの気持ちに戻って心から楽しみたい」とまで断言した。これは卒業を前提にしたものだったのだろうか?
「はい、そうです。まだ発表していなかったので遠回しな表現になっちゃいましたけど、心から楽しみたいというのは、卒業前の『思い出づくり』という意味ですよね。いままでキャプテンという立場でなかなか自由にできなかったことも多かったので、みんなにお任せてして、自分のために楽しもうって。
たしかに私がコンサートのはじめとおわりの挨拶をしていますけど、それはそういう役回りだからであって、私じゃないとできないというわけではないんですよ。次のコンサートでは、別のメンバーがしっかりとその役回りをこなしているはず。だから、なんの心配もしていないし、安心して卒業を発表できたんです」
MCに関しても春に取材をした時点で「チーム公演のMCは渡部愛加里ちゃんに任せているから大丈夫」と語っていたが、たしかに突然の卒業発表にも混乱することなく、しっかりと公演を締めくくってみせたのは渡部愛加里だった。ツアーでもラストの楽曲前の大煽りは矢吹奈子が担当。序盤は「私、こういうの苦手なんですよ」とグダグダになることが多かったが、途中から「そんなことは言っていられない」とビシッと締めるようになった。卒業発表後のツアーファイナルでは、確実に「次のコンサートにはもうなっちゃんはいない」と意識していたのだと思うと、いろいろと感慨深いものがある。