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UPDATE|2022/06/14

現役引退25年・工藤めぐみが語るレスラーにとっての“入場テーマ曲”「自分の歴史にリンクしている」

現役引退25年・工藤めぐみ



自分の中に組みこまれているからこそ、引退したいまでも自身のテーマ曲が流れると、DNAが騒ぎ出すのだろう。ある意味、テーマ曲はプロレスラーと観客をつなぐ「わくわく」の源であり、元気を呼び起こすリズムなのである。

6月15日にリリースされるプロレスのお宝テーマ曲を集めた異色のCD『プロレスQリターンズQueen』には、彼女のテーマ曲だった『ワン・ウェイ・ハート』も収録されている。引退から25周年という節目の年を記念しての収録で、音盤化されるのもそれこそ25年以上ぶりのこと。前述のとおり、いまでもリング登場時には流されているので、ある意味、現在進行形のテーマ曲であることを考えると非常に貴重なCD化となる。

だが、工藤めぐみにとって辛い日々が長らく続いている。

5月29日にかつてFMW時代に同じリングに上がっていたターザン後藤さんが肝臓がんで急逝。女子部を管轄していた存在であり、日本初の男女混合タッグマッチで対戦もし、歴史に名前を刻んだ相手でもあった。

「本当にびっくりしました。私だけでなく、ほとんどの方が後藤さんを『強さの象徴』だと思っていたじゃないですか? 死とか病気とかのイメージといちばん遠くにいる方でしたし、闘病されていたこともみんな知らなかったので……。

FMW時代はいろいろぶつかり合ったこともありましたけど、正直な話、いま、こうやってプロレスに関わらせていただいている中で『あぁ、ここに後藤さんがいてくれたらなぁ〜』ということは何度もありました。田中将斗選手(FMW出身で現在はZERO1に所属)の周年興行にも出ていただきたかったし、後藤さんがいてくれたら、すごいカードが組めるのにな、という局面は何度もありました。結局、後藤さんの強い意志に私たちが勝てなくて、出場していただくことは叶わなかったんですけど……大谷晋二郎選手の試合中のアクシデントもありましたし、昨年から本当に辛いことが立て続けにありすぎて……」

じつは昨年10月、工藤めぐみの最愛の夫にしてプロレスラーの非道さんが亡くなった。まだ51歳という若さだっただけにショックと喪失感も大きなものだった。

「もう感情がコントロールできなくなって、なんでもないときにボロボロ涙が出てきたりする日々が続きましたね。いままで年齢的にもあんまり生とか死とかについて考えてこなかったから、どんな気持ちになるのか考えもつかなかったんですけど、哀しいってレベルの問題なんかじゃないんですよね。もっとなにかしてあげられなかったのかな、という後悔ばかりがいつまでも押し寄せてきて……だから、こうやってお仕事をしていてよかったなって思いますね」

現役引退から25年。人生最大の悲しみを乗り越えて、邪道姫はかつての戦場だったリングにゼネラルマネージャーとして今も上がり続けている。もちろん試合をすることがないが、そこには彼女の人生における闘いが存在すると考えたら、本人の希望で哀愁のある旋律で構成されたテーマ曲が、心に染みてくる。この曲はプロレスラー・工藤めぐみのテーマ曲という括りを飛び越えて、人間・工藤めぐみのテーマ曲に昇華したのかもしれないーー。

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AUTHOR

小島 和宏


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