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UPDATE|2022/05/28

運動神経も身長も劣っていた、それでもKAIRIがWWEで成功した理由「渡米直後は毎日涙」

撮影/関根いおん


──非常にシビアな競争原理が働いている組織だということが伝わってきます。

KAIRI みんないつ契約を切られてもおかしくない世界なんです。朝のリング練習の前、女子選手で集まってストレッチをしていたら、2人くらいポンポンってコーチに肩を叩かれたことがあったんですね。「あれ? どこに行くんだろう?」と思っていたら、その2人が荷物をロッカールームから運び出しているんです。すると泣きながら「今までありがとう」って何の前触れもなく言われて。聞くと、その日で契約終了を言い渡されたみたいです。そういうシビアな環境だからこそ、試合に緊張感が出るのも当然かもしれないですね。

──そこで第一線で闘い続けてきたわけですから、聞けば聞くほど、アメリカを離れたのはもったいないような気もします。WWEに認められるということは、世界中のレスラーが望んでいるポジションなわけですから。

KAIRI 本当に私にはありがたすぎるというか、恐縮しきりという感じです。私の場合はタイミングがよかったのもあると思うんです。woman’s evolutionというスローガンのもと、女子プロレスを盛り上げていこうという改革の時期でしたので。私は運動神経もずば抜けてよくないですし、向こうではすごいスピードでアクロバティックな動きをする選手がたくさんいますから。身長だって155cmというのは一番低かったですしね。私がここまで結果を残すことができたのは、間違いなくファンの方やスタッフの方から「カイリ、頑張れ!」と応援で背中を押していただいたからです。

──ファンやスタッフからの支持が厚かったというのは、要するに試合内容が評価されたということになりますか?

KAIRI そうだと嬉しいですね……最近、選手としては引退したトリプルHさん(NXT責任者兼グローバル・タレント育成最高執行役)に言われたことがあるんですよ。「一番大事なのはカリスマ性だ」って。彼が選手の試合を見る上でどの部分を重要視しているかというと、お客さんの反応なんですよ。どんなにすごい動きをしたところで、お客さんのノリが良くなかったらトリプルHさん的には評価に繋がらないようでした。

──しかしトリプルH選手が言うように「カリスマ性を身につける」というのは、具体的にどうすればいいんですか?

KAIRI それは難しい質問ですね(笑)。私もすごく右往左往したんです。というのはWWEはトップレベルのレスラーが世界中から集結した巨大組織だから、コーチだけでも何十人もいて、それぞれアドバイスの内容も違うんですね。「ニコニコ笑顔だと弱く見えるから真顔でいけ」というコーチもいて、「なるほど」と思って最初は取り入れたんですけど、お客さんの反応はイマイチで(苦笑)。いろんなことを言われて全部を取り入れていると自分が何者か見えなくなってくるんです。一時期、私が髪をピンク色にしていたのもキャラ迷走の結果ですよ。
AUTHOR

小野田 衛


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