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UPDATE|2022/05/15

脳科学者・中野信子が語る“不倫”願望の男女差「心理状態の差異は本質的にはない」

中野信子 撮影/松山勇樹



──いろんな人と恋愛したい人と、一人を愛し続ける人では、何が違うのでしょうか。

中野 生得的な要素が大きいと考えていいと思います。味の濃い食べ物を好きという人は、次々と味の濃い食べ物が欲しくなりますよね。いきなり薄味で我慢しろと言っても、それで薄味が好きになるかというと、ちょっと難しい。しばらくは薄味で頑張れたとしても、美味しいと感じたとしても、やっぱり濃い味がくると、そっちを食べちゃう。

だからといって薄味が好きな人も濃い味が好きかというと、濃い味は品がないと思ったり、そもそも嫌いだったりする訳ですよね。味覚そのものの話で言えば、生育環境が関係していますけど、脳が薄味が好きか濃い味が好きかというのは、わりと生まれつきの部分が大きいので、そんなに変わるとは考えにくいです。

──ということは女遊びをしていた人は、結婚しても変わるのは難しいと。

中野 濃い味が自分は好きだけど、体に良くないから薄味で過ごしましょうと、それを一生できる人もいなくはないです。我慢をする能力というのは、また別のものなので、我慢をする能力が高いか低いかによっても変わってきますから。

──まあ結婚制度がなければ我慢する必要もないですよね。

中野 そうなんですよね(笑)。我慢する必要が生じることに対して、それだけのメリットが結婚生活にあると思えば、結婚生活を続けるのもいいと思うんですけど、メリットがないのであれば、あえて結婚を選ばなくてもいいんじゃないかなという風には思います。ただ年齢を重ねていきますと、相手に選ばれなくなるという残酷な現実もありますからね。

──女性に選ばれなくなった現実を受け入れられない男性も多いですよね。

中野 自分の状態を正確に知るというのは知性じゃないですか。そこそこ選ばれていないという現状があるのに、まだモテると思っているのは、正直イタいというか(笑)。

──最後に『不倫と正義』の対談は、中野さんにとって、どのような体験だったでしょうか。

中野 自分は理詰めで人を分析するような部分が強いですけれども、三浦さんは人間の心の機微という現実を大事にする人なんですよね。対談することで、理で仕組まれた格子の中に息吹を吹き込んでくれるようなところがあって、すごく心地よい体験で面白かったです。より有機的に物事も見られるようになったという良さがありましたね。
AUTHOR

猪口 貴裕


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