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UPDATE|2021/12/19

祝M-1優勝 錦鯉・長谷川雅紀が語る全く売れなかった暗黒時代「思わず涙したお母さんの納豆おにぎり」

錦鯉・長谷川雅紀 撮影/松山勇樹



――成功者の中に一人だけブレイク前の無名芸人が(笑)。

長谷川 誰も知らない芸人を、よく使ったと思いますよ。だから起用してくれただけでもありがたかったんです。密着して東京まで追いかけてくれて、帰省もできて、それがきっかけで何年も会っていなかった親にも会えたんです。ただ、こういうドキュメンタリー番組って、ダメな人をリアルに追いかける内容が多いじゃないですか。アイドルでもミュージシャンでも芸人でも、そこから売れた人っているのかなって思うんですよ。いなくないですか?

――確かに心当たりがないです(笑)。

長谷川 たぶん、ダメなところを見たい訳だから、そういう人を狙っているんですよ。だからドキュメンタリー番組に出たら終わりまで言わないけど、そこから売れるのは至難の業だなと思いました。あと、そのお話をもらったときに、自分の中で一つだけ決めていたことがあって、絶対に泣かせてくるなと思ったから、泣くのはやめようと心に誓ったんです。

明石家さんまさんイズムじゃないですけど、芸人が泣くのって嫌かなって。でも、まんまと最後、泣いているんですよ。東京に帰るとき、駅のホームで電車のドアが閉まる瞬間に、母親が買い物袋を渡してきたんです。その中を見たら、おにぎりとサラダが入っていたんですけど、僕が子供の頃に大好物だった、具が納豆のおにぎりだったんです。それを電車の中で食べているときに泣いちゃいましたね。

――確かに感動的なシーンですね。

長谷川 ずっと母親から、「いい加減、芸人を辞めて、就職したらいいんじゃないか」って言われていたんですけど、その撮影のときに「好きなことをやれていいね。もうちょっと頑張ってみれば」と言ってくれて、その言葉を、納豆おにぎりを食べながら思い出したんですよ。ただ、その番組を見たタカアンドトシは、納豆が糸を引いているから腐ったおにぎりかと思ったらしいですけどね(笑)。(中編に続く)

▽錦鯉の自叙伝『くすぶり中年の逆襲』が新潮社より発売中
1,430円(税込)
AUTHOR

猪口 貴裕


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