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UPDATE|2024/02/22

児童虐待、性加害、SNS…インド映画が訴える強烈な社会風刺、Netflix『バクシャク -犯罪の告発-』

Netflix『バクシャク -犯罪の告発-』



『バクシャク -犯罪の告発-』は、特定の児童虐待や性虐待だけについて触れた作品ではなく、同時にSNSで簡単に他人と繋がれる時代になったというのに、人々の心は離れているということや、インドにおける女性の地位の変化と、その現在地ついても触れている。

そのため少し詰め込み過ぎていて、要点が見えなくなる部分も多少あるかもしれないが、現代人が改めて考えるべき様々なテーマが凝縮されているといえるし、多角的に観ることのできる作品だ。

そして主人公のヴァイシャリは、監督のプルキット自身の想いが強く反映されたキャラクターともいえる。

ヴァイシャリは、規制の多い大手企業から転職し、弱小局で人材と資金不足もあって、記者兼キャスターとして働いている。

自分が想い描いたジャーナリスト像とはかけ離れた、ご近所トラブルや若者の就職問題といったものばかりを報道するなかで、情報屋からとてつもないスクープを持ちかけられる。はじめは半信半疑ではあるが、次第に自身のなかにあるジャーナリズムとは何かに向き合っていくことになる。

大きなスクープをあげたいという野心もあるが、それ以上に彼女を突き動かすのは、正義と真実を求めているからであり、それこそがプルキット監督自身の想いを反映させている部分もあるのだ。

今作の舞台となっているのは、ビハール州のムナッワルプルというムザッファルプルをもじったような架空のものではあるが、描かれていることには、いくつかもモデルが存在している。

ただ政治家や政府機関、警察の汚職なども描かれていることから、さすがに実在の場所を舞台とするのは難しかったのかもしれない。それでもプルキット監督の想いというのは十分に伝わってくるはず。

プルキットといえば、チャンドラ・ボーズの伝記ドラマ『Bose: Dead/Alive』の全9話のうち7話分を監督して話題になったことも記憶に新しいが、2021年から撮影が開始されている『Dedh Bigha Zameen』も待機中と、社会派な作品を手掛けるクリエイターとして期待できる存在だ。

また一方的な視点のフェミニズム映画にならないように配慮もされている。

プルキットの長編初監督作品『置き去り』(2016)は、突然妻が失踪した男の視点から描かれるサスペンスであった。これは固定概念から脱することができない象徴的な男性像の心境をミステリーとして反映させたものであったが、今作のなかに登場する主人公ヴァイシャリの夫も、そういった一面がある。

しかしその一方で、理解者になれるだけの余地があることも同時に示しており、男性のなかでも少しずつ変わりつつある、変われる可能性があることを直接的ではないが示している。


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