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UPDATE|2024/02/21

アカデミー賞最注目『哀れなるものたち』が男たちに突きつける“女性の自由”…衝撃作に有村昆が切り込む

『哀れなるものたち』

第96回アカデミー賞で、作品賞を含む11部門にノミネートを果たし、18禁指定も納得の刺激的な描写も話題になっている『哀れなるものたち』。一般のシネコンなどでも拡大公開となり、世界中でヒット記録を更新中。今回、映画評論家の有村昆が、本作の見どころ、そして「お供映画」として、『哀れなるものたち』を観る前後に“ついでに”観ておくとより楽しめるという作品を紹介。最旬話題作に切り込みます!

【写真】『哀れなるものたち』に切り込む有村昆

『哀れなるものたち』は、人気女優のエマ・ストーンと、鬼才ヨルゴス・ランティモス監督という、『女王陛下のお気に入り』でも組んだふたりが、満を持して挑んだ作品です。

お話のベースになっているのは、モンスター映画の古典である『フランケンシュタイン』。正確にはフランケンシュタインというのは博士の名前で、彼が作った人造人間のことは「フランケンシュタインの怪物」と呼ぶんですが、本作は、その怪物の女性版のようなベラによる自分探しの旅をファンタジックに、そして生々しく描いていきます。

若くして自殺を図った女性。そのお腹の中には赤ちゃんがいた。それを哀れんだ、ウィリアム・デフォー演じるゴドゥイン・バクスター博士は、その胎児の脳を死んだお母さんに移植して、人造人間ベラ・バクスターとして蘇らせるんです。

ベラは、見た目は大人だけど中身は子供という、名探偵コナンくんの逆のような状態。最初は食べ物すら自分で食べられませんが、その精神は赤ちゃんから幼児、そして少女へと成長していきます。

そんなベラを、エマ・ストーンが特殊メイクなどせず、見た目はそのままで演じ切るのが、まず凄いです。魂が乗り移ったかのような演技は、この作品の大きな見どころとなっています。

そんなベラに、ゴドゥイン教授の助手の男の子が恋するんです。思春期の淡い恋が芽生えて、それでは結婚しようということになり、その契約書を作成するために弁護士のダンカンを呼びます。

マーク・ラファロが演じる、このダンカン弁護士は、口が達者な遊び人のオジサンで、ベラのことを気に入って旅行に連れ出そうとする。ベラちゃんも、もっといろんな世界を知りたいという気持ちになって、駆け落ちのように飛び出してしまうんです。

魅力的なベラには、旅先でいろんな男たちが寄ってくる。そして船のなかで、ある仕事をしているマダムと出会い、旦那に養ってもらうよりも自立しなさいと勧められ、娼婦として働くことになる…というのが序盤の展開です。

女性の自立とは、体を売ること、という極端な描かれ方をしてますけど、ベラはいろいろな書物を読んでちゃんと考えた上で、体を売ることが何か悪い、 それこそが女性の自由だという考えに至るんです。


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