一面の雪景色、静寂を切り裂く銃声、倒れる獣、広がっていく鮮血──。2月16日より全国順次公開される俳優・東出昌大の狩猟に追ったドキュメンタリー映画『WILL』は、生々しさを超えた「生と死」が色濃く刻まれている。この衝撃的な作品について、東出と今作の監督を務めた映像作家・エリザベス宮地の対談を実施。過酷な撮影話から、東出・宮地両者が抱いた互いへの想い、そして“生き物を狩るとは?生きるとは?”についてうかがった(前後編の後編)。
【写真】雪山で狩猟を行う東出昌大に密着、『WILL』場面写真【14点】──1年以上に渡る密着を通じて、東出さんの目にエリザベス宮地という人間はどのように映りましたか?東出 それはもう、容赦ない人だなと思いました。
宮地 アハハ!(爆笑)
東出 僕が酔っ払って、自分でも喋ったかも覚えていないような瞬間をバンバン本編に入れてくるからね。マジか~!って思った(笑)。
宮地 確かに、編集している時にプロデューサーの高根さんから「本当に人の心がないね」って言われた。監督って被写体のことが好きになれば、絶対に良い場面ばかりを活かしていくはずなのに、東出さんに対してはそれが全然ないよね、と…。
東出 なんでよ(笑)。けど、それが良いんです。僕も役者として演技するときは、容赦なく役を作りたい人間で。宮地監督のモノ作りへの向き合い方は、僕の仕事への容赦のなさと似ているなと思いました。それに、人のところに行って誰かを撮っている時、カメラという最大の異物を感じさせないコミュニケーション能力で人の心を開かせていく。それでいてちゃんとズバッと切り込んでいくのがスゴイ。
──東出さんを支える町のみなさんがカメラを向けられても、硬さを見せずにスッと自然体で振舞っている姿を見るに、宮地さんがいかに人の気持ちを掴む撮影をされてきたかが伝わりました。東出 そうそう‼ 本当に町のみなさんからも愛されていて、毎回のように「宮地くん、いつ来るだ?」って聞かれますから。
宮地 いやあ、逆に僕はカメラないとあんまり喋れないし、その人に興味があるからできているだけ。そういう意味では、東出さんの方がすごいと思ってます。全く縁も所縁もない土地に移り住んで、そこで自分の居場所を見つける。東出さんの愛される力って、相当なものだなって思った。