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UPDATE|2024/02/14

東出昌大の狩猟に映像作家・エリザベス宮地が密着「積雪で凍傷に…『慣れるしかない』と言われて」

撮影/武田敏将

一面の雪景色、静寂を切り裂く銃声、倒れる獣、広がっていく鮮血──。2月16日より全国順次公開される俳優・東出昌大の狩猟に追ったドキュメンタリー映画『WILL』は、生々しさを超えた「生と死」が色濃く刻まれている。この衝撃的な作品について、東出と今作の監督を務めた映像作家・エリザベス宮地の対談を実施。過酷な撮影話から、東出・宮地両者が抱いた互いへの想い、そして“生き物を狩るとは?生きるとは?”についてうかがった(前後編の前編)。

【写真】雪山で狩猟を行う東出昌大に密着、『WILL』場面写真【14点】

──いきなり恐縮ですが、お二人が初めて生き物の“中身”……内臓を見たのはいつ頃でした?そしてその瞬間、どんな想いが過りましたか?

東出 僕は小学生の頃、道端に倒れていた猫の轢死体を見たときですね。缶蹴りとドロケーしている瞬間がこの世の天国と思っていた僕にとって、その瞬間はまるで禍々しさ、禁忌……「決して触れてはいけない、見てはいけないものを見てしまった」と、自分の中に“ぐちゃぐちゃ”した感情が生まれていくのがショックで。大人になり狩猟を始めたことで、徐々に動物の死や内臓に抵抗がなくなりましたが、あの衝撃は今でも残っています。言葉では言い表せない感覚でした。

宮地 本当にあの感覚はなんなんだろうね? 僕は二つあって。一つ目は科学の授業でカエルを解剖した瞬間。それまで道路に潰れたカエル“らしき”ものは見てはいたものの、自分の手で解剖して内臓を取り出すという行為がすごくショックで。気持ち悪くなって吐いた記憶がある。

東出 あぁ~、わかるなあ。

宮地 もう一つは、僕は高知県出身ということもあり町中に普通に猟師がいて。ある日、友だちの家に遊びに行くと、外にバケツが置いてあって。その中をふと覗き込むと、解体し終わったイノシシの……あれ、なんだっけ?

東出 残滓?

宮地 そうだ、残滓が無造作に入っていて、うわぁ!って驚いたんです。さっき、東出さんが「見てはいけないものを見てしまった」と言っていましたけど、僕も同じような気持ちになりました。

──ありがとうございます。この質問をしたのは、『WILL』は冒頭から野生動物の生と死が色濃く描かれ、上映中常に「生命とは?」をぶつけられ続ける作品だと感じたからです。宮地監督は動物の死を、そのまま捉えることに躊躇しませんでした?

宮地 「狩猟」を撮ると決めた時点で覚悟していたので、そこは問題ありませんでした。そもそも、映画というアウトプットを選んだのは、モザイクをかけたくなかったからなんです。狩猟の瞬間を撮っているのに、動物の臓器を隠してしまったら全て意味ないんですよね。狩猟という行為を撮るとは、その行為にまつわる生と死を捉えるとは、こういうことなんだと包み隠さず届けることが大事だなと思ったんです。

AUTHOR

田口 俊輔


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