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UPDATE|2023/06/17

「初期AKB48にはイスラム武闘派と同時代性がある」ノンフィクション賞記者・田原牧の“推し活”

田原牧 撮影/西邑泰和



「アルカイダのカイダって、基地って意味なんですよ。アルは定冠詞。だからアルカイダは”THE 基地”なんですが、AKB劇場っていうのも秘密基地みたいなものなんです。だっていかにも素人が作った会場で、死角になる柱もある。でも、その手作り感とそこに熱中する連中と演者の関係が本当に濃密。

そもそも世間から見たら、30〜40代のおっさんたちが10代前半の女の子にペンライト振ってるって、異常なんですよ。それを重々承知の上で、世間が背を向けるような価値観の中でお互い結びつきたい。一生懸命推すことで、ちょっとでも売れてくれると嬉しいし、一緒に泣いたりする」

一方、アルカイダについては以下のように書いている。

「彼らはアフガニスタンという地球の果てに、欧米が支配する世界の常識に背を向けた物理的な空間を拓いた。世界の常識など顧みない秘密基地。世界の欺瞞に憤る一部の若者たちはそこに吸い寄せられていった」(『人間の居場所』より)

同じ時代に隆盛を極めた2団体に共通した「秘密基地」感。

ちなみにここまで「空間推し」というスタンスを貫いていた田原さんだが、よくよく聞けば推しメンもいたようだ。しかし「誰ですか?」と聞くとしばし口ごもる。その後、照れた様子で口にしたのが「宮澤佐江ちゃん」。握手会にも参加し、選抜総選挙の際はCDを複数枚買うなどして応援していたというが、「私なんか全然!」と謙遜する。「だって家売った人までいるんですよ!」というのがその理由だ。

思えばAKB全盛期には総選挙のためにCDを爆買いし、それで破産したなんて話も耳にした。だからこそ、「10枚くらいの私なんて全然!」ということらしい。そんな佐江ちゃんを推し始めた理由を問うと、「健気に見えて…」。これまでアラブ武装派組織まで出して饒舌にAKBを語ってたのに、推しメンのことになると急に語彙力が失われるのはなぜだろう。(後編へつづく)

【後編はこちら】「アイドルオタクの空間は祝祭的解放区」ノンフィクション賞記者・田原牧の “推し活”を雨宮処凛が深掘り

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