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UPDATE|2023/04/24

集落の呪縛から逃れられない男を横浜流星が熱演、日本社会の縮図を描く『ヴィレッジ』

(C)2023「ヴィレッジ」製作委員会© 2023 UNIVERSAL STUDIOS. All Rights Reserved. 2



ひとつの正義感が、いかに周りを壊すか。それは正義なのか……。倫理観や価値観が環境によって変化することも改めて思い知らされる。

工業地帯や産業によって成り立っているラストベルト(錆びれた工業地帯)と呼ばれる場所や、今作に登場するゴミ処理場のように、企業が集落全体の雇用を引き受けていて、友人も親戚も同じ会社で働いているような状況もあるわけで、他者にも迷惑がかかるという意識も働くため、意見も言えない環境が自然と形成されていってしまう。地方の村の背景に宗教的なものを感じるのは、集落の成り立ち自体が、宗教構造にも似ているからだ。

そんな集落の呪縛から逃れることができない主人公・片山優。横浜流星の体当たり演技によって、大きな説得力をもたらしている。

それらの問題は、なにも集落や田舎に限ったことではない。都会でも同様の問題は多く存在している。ところが様々な要素によってカモフラージュされてしまって、見えなくなっているだけで、抱えている問題は同じなのかもしれない。なのにも関わらず田舎の方が怖く感じるのは、人口が少ないだけに、問題となる要素が隠しきれず、直接的に伝わってくるからだろう。

集落という限られたフィールドだけに限らず、日本社会の抱える問題そのもの、原点だと捉えるべき内容である。

他人に興味がなくなり、隣近所との交流が無くなった現代を危惧するという意見もあるが、その一方で交流があるからこそのトラブルや息苦しさもあるわけで、そう考えるとどっちが正しいのかは判断がつかない。

そして丁度、1月に公開された劇場版『イチケイのカラス』では、今作と共通したテーマが描かれていたが、視点としては真逆の視点だ。偶然にも同作において主人公を演じた黒木華が今作にも出演しているだけに、なんだか不思議な感覚にもなるが、あわせて観ると視野が広がるはずだ。

【ストーリー】
夜霧が幻想的な、とある日本の集落・霞門村。神秘的な「薪能」の儀式が行われている近くの山には、巨大なゴミの最終処分場がそびえ立つ。幼い頃より霞門村に住む片山優は、美しい村にとって異彩を放つこの施設で働いているが、母親が抱えた借金の支払いに追われ希望のない日々を送っている。かつて父親がこの村で起こした事件の汚名を背負い、その罪を肩代わりするようにして生きてきた優には、人生の選択肢などなかった。そんなある日、幼馴染の美咲が東京から戻ったことをきっかけに物語は大きく動き出す――。

【クレジット】
出演:横浜流星 黒木華 一ノ瀬ワタル 奥平大兼 作間龍斗/淵上泰史 戸田昌宏 矢島健一/ 杉本哲太 西田尚美 木野花/中村獅童 古田新太ほか
監督・脚本:藤井道人
企画・製作・エグゼクティブプロデューサー:河村光庸
制作プロダクション:スターサンズ 制作協力:Lat-Lon
配給:KADOKAWA/スターサンズ
製作:「ヴィレッジ」製作委員会
(C)2023「ヴィレッジ」製作委員会© 2023 UNIVERSAL STUDIOS. All Rights Reserved.
22023 年 4 月 21 日(金) 全国公開

【あわせて読む】『だが、情熱はある』に見る、実在する人物を演じることの難しさと高橋&森本の覚悟

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