奇才M・ナイト・シャマランの新作『ノック 終末の訪問者』が現在公開中。毎度のことながら賛否両論を巻き起こしているが、そもそもシャマランがどういった映画監督なのかを知っているだろうか?
【写真】一貫して描いてきたのは家族の絆、『ノック 終末の訪問者』場面カット【5点】シャマランは、幼少期から映画製作に意欲をもっており、親から与えられたスーパー8カメラで17歳までに45本の自主映画を制作するほど。自主映画を除く、デビュー作となる『Praying with Anger』は2012年にトロント国際映画祭で上映され、期間限定ではあったが劇場で商業上映もされた。のちに『翼のない天使』(1998)を監督、『スチュアート・リトル』(1999)の脚本を手掛けるなど、幅広く活動していながらも、どれも興行成績は不調。
シャマランの転機となったのが、日本でも名作として知られている『シックス・センス』(1999)である。同作が興行的に成功し、アカデミー賞にもノミネートされたことで、シャマランの名前が国際的に知られる様になり、続く『アンブレイカブル』(2000)、『サイン』(2002)も興行的、批評的にも高く評価され、どんでん返しありきのシャマランの作風はトレンドとなり、この時から多くの類似したサスペンス映画が多く制作されるようになった。
一方で、作風を守らないといけないという重圧がシャマランを悩ますようになり、『ヴィレッジ』(2004)や『レディ・イン・ザ・ウォーター』(2006)など、シャマランのテイストに沿った作品ながら、あまり評価されないマンネリ状態となった。
『チャーリーとチョコレート工場』や「007」シリーズの監督候補になっていたのもしたが、我が道を進んでいたシャマランは、そういったオファーを断っていたのにも関わらず2010年には初めての脚色でテレビアニメ『アバター 伝説の少年アン』を実写映画化した『エアベンダー』(2010)や『アフター・アース』(2013)の監督を務めるなどして繋いでいた。
そんなシャマランが私財を投じて完成させたインディーズ映画『ヴィジット』(2015)の成功が2度目の大きな転機となり、長年温めてきた『アンブレイカブル』の続編企画として『スプリット』(2016)と『ミスター・ガラス』(2019)の映画化を実現させることもでき、シャマランは再び表舞台に戻ってきたわけだが、紆余曲折ありながらも、実はシャマランがどの期間においても一貫して描き続けているテーマがある。
それは「家族の絆」だ。家族といっても血の繋がりだけに限定されたものではなく、例えば疑似家族であっても、寄り添って生きているコミュニティを「家族」と解釈しているのだろう。