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UPDATE|2023/04/21

【何観る週末シネマ】ホームレス家族と裕福な夫婦が出会いとんでもない結末が…『高速道路家族』

(C)2022 Seollem film, kt alpha Co., Ltd. All Rights Reserved.

この週末、何を観よう……。今週公開の作品の中から、映画ライターのバフィー吉川が推したい1本をピックアップ。おすすめポイントともにご紹介します。今回ご紹介するのは、4月21 (金)より公開される『高速道路家族』。気になった方はぜひ劇場へ。

【写真】映画『高速道路家族』場面写真

〇ストーリー
テントで寝て、夜空の月を照明として暮らすギウ(チョン・イル)と3人の家族。彼らは、高速道路のサービスエリアを転々とし、再び遭遇することのない訪問者に2万ウォンを借りながら食いつないでいる。ある日、すでにお金を借りたことのあるヨンソン(ラ・ミラン)と別のサービスエリアで再び遭遇してしまう。不審に思ったヨンソンはギウを警察に届け出ることに。ヨンソンは残されたギウの妻ジクス(キム・スルギ)と子供2人を放っておけず、家へ連れて帰り一緒に暮らすことに。何不自由のない生活を送るジスクと子供たち。そんな家族をギウは取り戻そうとするが…。相反する二つの家族の出逢いがとんでもない結末を迎えることとなる。

〇おすすめポイント
法律や福祉は、ときに矛盾を生む。どんな状況においても家族が一緒にいることこそが幸せ……ではない。貧困の家族は一緒にいることが社会的に困難な状況に追いやられるのだ。

今作の前半は高速道路のサービスエリアを転々としながら、詐欺をはたらく家族の様子を描いたブラックコメディのようではあるが、後半からは痛烈な社会風刺となっていて観ていて辛くなる。

世界から路上生活者というのは、統計上は減っているようにも思えるが、『ノマドランド』(2020)の中でも描かれていたように、家を持たず車中泊で職場を転々とするノマドや『東京難民』(2014)のネットカフェ難民のように、路上生活ではないという理由で計上されていないだけで、新たなかたちのホームレスは年々増加している。そんな中で法律や福祉は現代に全く追いついていない。

今作の舞台となっている韓国だけではなく、日本も同じだ。例えば夫婦が低所得でギリギリの生活をしているよりも、母子家庭になる方が経済的に安定する。子どもの手当も出やすい。だから子どものため、医療のため、経済のために別れたくなくても離婚する夫婦が存在するという現実を知ってもらいたいし、そんなときに主に犠牲になるのは、男性側だったりする。

つまり今作で描かれていることは、決して極端な話ではない。実は私たちのすぐそこにあるけれど、隠れている社会の闇だ。

家族で地獄に行くか、ひとりを切り離して生きていくか、そんな残酷な決断を迫られるということが現実に起きている。

理想や綺麗ごとだけでは生きていけないし、教育も受けられないと改めて思い知らされる作品だ。

〇作品情報
監督・脚本:イ・サンムン 音楽:イ・ミンフィ 美術:ソン・ソイル
出演:チョン・イル、ラ・ミラン、キム・スルギ、ペク・ヒョンジンほか
2022年/韓国/韓国語5.1ch/128分/英題:Highway Family
字幕翻訳:具美佳
配給:AMGエンタテインメント 
公式サイト:https://kousokudouro-kazoku.jp
4月21日(金)よりシネマート新宿ほかにて全国公開

(C)2022 Seollem film, kt alpha Co., Ltd. All Rights Reserved.

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