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UPDATE|2023/03/31

HKT48を卒業・矢吹奈子の輝かしいアイドル人生、小学生で加入した少女が成長し韓国でスターに

矢吹奈子 撮影/佐賀章広



とにかく自分のことよりも、HKT48をどうしていくのか?を彼女は常に考えていた。韓国で学んできたことを、なんとかフィードバックできないものか、と試行錯誤しつつも、それによって、いままでのHKT48の良さが打ち消されてしまうのは嫌だ、という想いも強く抱いていた。

コロナ禍でコンサートの演出にも制限がかかる中、矢吹奈子はセンターに立って、グループ全員を牽引していった。広い会場でステージを俯瞰で見ると、それがよくわかった。

全員を引き連れてパフォーマンスしている感じ。それによって全体のパフォーマンスが向上していっている感じ。矢吹奈子はHKT48の良さを消すことなく、確実に変化をもたらしてくれたのだ。

昨年春に開幕したツアーのときは、まだ制限が非常に厳しく、観客は立って応援することすらできなかった。しかし、アンコールの際、矢吹奈子の呼び掛けで1曲だけスタンディングでの観覧がOKになった。クラップしかできないけれども、コロナ禍の長く暗いトンネルから、やっと一歩踏み出せた瞬間……錆びついた鎖から解き放たれた感覚はいまでも忘れないし、その先頭に立っていた矢吹奈子の姿も、いつまでも忘れないと思う。

もうひとつ興味深かったのは、彼女が韓国に行っているあいだにリリースされた楽曲での立ち居振舞い。後方のポジションに回った彼女は、その位置からメンバーのパフォーマンスをしっかりと見ていた。自身の背中を見せるだけでなく、メンバーの背中もしっかりと見る。じつに立体的な視点がそこにはあった。

「みんな、本当に悲しんでくれているのかな……」

卒業を発表した直後、矢吹奈子にそんなことを言われた。

たしかに「辞めないで、卒業しないで!」という悲鳴はあんまり聴こえてこないような気がする。そもそも、卒業発表の場はコンサート会場で、まだ歓声が解禁されていない時期だったから、みんな、リアクションすらできなかったから、不安になってしまうのも致し方ない。

でも、誰が「辞めないでくれ!」と言えるだろうか?

急な発表だったから、たしかにびっくりはしたけれども、韓国から帰ってきて、こんなにも長い期間、HKT48で活動してくれたことには感謝しかないし、グループに対する献身ぶりを見てきたから、本当にもう「ありがとう」しか言葉が見つからない(その後、彼女自身もメンバーの涙やファンからの熱いメッセージを見て、安堵したようだ)。

AUTHOR

小島 和宏


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