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UPDATE|2022/11/02

SKE48を卒業、担当記者が見たアイドル・須田亜香里の「プロとしての姿勢と覚悟」

(C)2022 Zest, Inc. / AEI

今月1日、SKE48・須田亜香里の卒業公演が行われた。アイドル活動13周年のその日にアイドルから卒業することになった。近年はバラエティ番組を主戦場にしている彼女ではあるが、選抜総選挙で2位に輝くなど、アイドルとしての実績も目を見張るものがある。そんな須田を突き動かしていたものとは何だったのか。デビュー当時から取材する担当記者が振り返る。

【写真】卒業公演を終え、SKE48劇場の壁写を外す須田亜香里、ほか卒業公演【5点】

 須田亜香里は意志の人だ。彼女ほど意志の強いアイドルに会ったことがない。

 1日の卒業公演でもその一端を垣間見ることができた。須田はSKE48チームEのリーダーを務めてきたが、次期リーダーに佐藤佳穂を指名した。その理由は、「いつもファンの方の方のことを思って、動いているところ」と「プロとしての姿勢、覚悟を持っている」ことだという。この2点はまさに須田が信条としていたものだ。

 須田といえば、握手会。選抜総選挙でも全国的に名前を売った。ファンを第一に考えていた。須田は言葉のチョイスに時間をかける人だった。取材をしていると、「うーん、なんて言えばいいかな……」と熟考することがよくあった。誰かにとっては褒め言葉になっても、他の誰かを下げることにならないか。失礼に当たるかもしれない――。複数の角度から考えて、言葉を発していた。

 プロとしての姿勢には何度も感服させられた。たとえば、まだ1期生と2期生がグループの中軸を担っていた10年以上前のこと。私はあるコンサートを開場前から見学していた。リハーサルが終わり、先輩メンバーの数人が全体に何点か注意を促した。その後、3期生の須田はすっと挙手し、全メンバーの前で、「ここはこうしたほうがいいと思います」と発言をした。近年こそそのイメージは薄れてきたとはいえ、当時バリバリの体育会系集団だったSKE48で、そんな場面を見たことがなかった。甲子園常連校の野球部において1年生が3年生を前にして意見するようなもの……といったら大げさかもしれないが、それに近い衝撃を受けた。

 何年も経ってから、このことを本人にぶつけてみた。

「震えながらでしたよ(笑)。自分なんかが言っちゃダメかなって。でも、そう思ってしまったら、それは舞台に対する妥協なので。だから、私は言ってきました。言わないのが協調性だと思っている子が多いと思うけど、それはただの妥協です」

 まったくの正論だ。耳が痛い。本人も自覚しているように、須田はステージに対して厳しい。先輩という括りに入るようになってからも後輩たちにたびたび注意を促してきた。何も言わないことは協調性ではない。気づいたことは発言する。その姿勢がいいステージを作る。そのためには心を鬼にしなくてはならないこともある。その厳しさを新リーダーの佐藤佳穂も持ち合わせているということなのだろう。
AUTHOR

犬飼 華


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