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UPDATE|2022/09/24

主戦場は地上波からPPVに?「メイウェザーVS朝倉未来」ABEMAプロデューサーに聞く勝算

ハワイでの会見に登場したメイウェザーと朝倉未来 (C)AbemaTV,Inc.

かつて格闘技のビッグマッチは地上波の中継放送なしには開催できないとされてきた。その常識を覆したのが、6月に開催された那須川天心VS武尊の“世紀の一戦”だ。ABEMAでの配信は50万件以上券売され、PPV(ペイパービュー)の売上は単純計算で25億円以上と想像できる。明日25日(日)には、また新たなビッグマッチが開催される。ボクシング元世界5階級制覇王者のフロイド・メイウェザーVS朝倉未来戦。この試合も生中継するのは地上波ではなく、ABEMAだ。

【写真】まさに一触即発、都内で開催されたゲリラ会見で向かい合う2人【6点】

「PPVは売上の相当数が当日。したがって蓋を開けてみないとわからない」と慎重な姿勢を示しつつも「現段階の反響としては、過去のPPVの中でも1番目か2番目。勢いでいえば、THE MATCH 2022に近いのではないかという手応えもあります」そう語るのは、ABEMA格闘chエグゼクティブ・プロデューサーの北野雄司氏だ。北野氏にメイウェザーVS朝倉未来戦のビジネス的展望と、変わりつつある格闘技中継の今を聞いた。

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2018年の大晦日に開催された那須川天心とのエキシビジョンマッチでは、メイウェザーのファイトマネーは11億円だったとも言われる。今回、メイウェザーにファイトマネーを支払うのはRIZINで、その金額がいくらなのかはABEMA側には分からない。

「ただ、その額が高いことは仕事をしていると嫌でもわかるんです。だから責任は感じます。頑張らなきゃと気合が入っています」北野氏はそう語る。

PPVビジネスはシンプルだ。番組の値段×購買者数=売上。そこから必要経費を引いて、契約書で決められた割合をRIZINに支払う。RIZIN側からすると、他にも会場チケットの売上などがあり、ABEMAから支払われる配分金などは全体のあくまでも一部。だが、相当大きな割合を締めていることは間違いない。

「PPVは直前のムードがどれくらい盛り上がっているかが重要で、そこは我々としても必死で頑張っているところ。広告もかなり出しているし、番宣となるコンテンツも自前で作っている。たとえば通常ならメイウェザーは試合直前に来日するけど、今回は事前に来てプロモーションすることになっている。会見の様子、空港から降り立つ姿、試合当日のホテルから会場入りするまでの光景……可能な限りメイウェザーをカメラが追い、盛り上げていきたい」(北野氏/以下同)

北野氏にこれまでの密着取材を通じて感じたメイウェザーの印象について聞くと「すごく頭がいい人」という言葉が返ってきた。

「世界のPPVの歴代セールスの上位は多くがメイウェザー関連。インタビューでその秘訣について聞いたんです。そうしたら彼は『秘訣は明かせないけど』と不敵に笑いながら、『でも市場環境が変化していることは理解している』と付け加えた。それで収録が終わったあと、『あの言葉ってどういう意味だったの?』と確認したら、すごく鋭い答えが返ってきてハッとさせられたんです。その内容はオフレコだから明かせないですが、非常に冷静にマーケットを把握していることに驚かされました」

一方で朝倉未来に対しても「単なる不良上がりのファイターでは決してない」と北野氏は断言する。自身もプロデューサーという立場でありながら、「朝倉選手のほうがよっぽどプロデューサー」と脱帽している様子だ。

「プランナーとしての能力に長けていますよね。2人とも従来のアスリート像から逸脱しているし、自分できちんと演出できる選手が上に来る時代になっているんでしょうね。今のスポーツ界は完全に“個”の時代。どうやって自己プロデュースするかが選手も問われているんだと思います」

今回のメイウェザーVS朝倉未来戦は「すごく今日的なコンテンツになるのでは」という。これまではボクシングの世界タイトルマッチなど、競技として価値があるコンテンツが格闘技ヒエラルキーのトップにあった。だが……。

「アメリカではYouTuberのローガン・ポールが、世界タイトル戦のあとにメインで試合をしてPPVで大きな売り上げを出している現状がある。コアなボクシングファンからはアレルギー反応が出るかもだけど、『なにか非日常的なものを見てみたい』というピュアな野次馬根性を持つファンがPPVを買っているのは事実です。日本でこの種の影響力を持つことができるのは今、朝倉未来選手をおいて他にいないと思う。メイウェザーという格好の相手に対してPPVがどれだけ売れるか、そしてこのエキシビションマッチの後、朝倉未来という存在がどれだけ大きくなるか……個人的にはそこが気になりますね」
AUTHOR

小野田 衛


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