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UPDATE|2022/09/09

「人が落ちてくるからタクシーを使う」自殺未遂は日常茶飯事、歌舞伎町での死の軽さと男たちの本音

写真はイメージです


 女たちの本音を取材してきた宇都宮さんだが、男の側も時には傷害事件で刺され、SNSに交際歴を暴露されるなどホスト生命を失うリスクを負っている。姫のご機嫌を取り続けねばならないホストたちの本音について「ほとんどの場合はムカついているでしょうね。いくらお金の関係といっても、あまりにも奉仕を要求する女の子たちにはホストも疲れ、弱音を吐く子もいます」

男の側も『推し』『担当』に貢献したい女の心情を利用して稼いでいる。宇都宮さんによれば「『俺をアドトラックに載せてくれ!』っといった営業テクニックもあるんです」というように、実力主義のホスト業で生き残りをかけている。

 しかし、色恋を商売のタネにした関係がエスカレートすれば、2019年のホスト殺害未遂事件のような事態になるし、暴力沙汰を訴えられれば男のホストの方は圧倒的に不利だという。ホスト殺害未遂事件でも、加害者の女に比べ被害者のホストが省みられることは少なかった。「いくら色恋商売といっても、女の子の側が要求をエスカレートさせれば、お金だけでは許容できないこともあるのがホストの男の子の本音かもしれません」(宇都宮さん)

 トレンドを反映してか、ホストのファッションも変わった。ブランドもののスーツ、ギラギラのアクセサリーのようなカリスマホストのイメージは今では少数派で、当世のホストはカジュアルな服装で化粧も怠らず、中性的なファッションをしている。

「皆ものすごく痩せてて、竹ひごのような体型です。2.5次元や男性地下アイドルのようなルックスが好まれるからですが、歌舞伎町の外だと特異すぎて浮きます。付き合っている女の子たちでも『あの格好でディズニーランドには行けない』と話すような、歌舞伎町独特のファッションです」という当世ホストファッションである。

 金銭感覚も倫理観も、死に対する感覚すらも麻痺しそうな歌舞伎町での女と男の「どこか歪んだ支え合い」(宇都宮さん)が『ホス狂い』には描かれている。「ホストに狂う女性の本音・情緒を取材を通じて聴き、本書にまとめることができました。一方的に嘲笑や批判を浴びせるのではなく、彼女たちがなぜこの選択を後悔せず、むしろポジティブですらいるのか、その心理まで理解してほしいと思います。決して恨み節だけではない女たちの声がSNSで、あるいはメディアでオープンにできるようになった。それが2020年代のホスト界の特徴かもしれません」

【あわせて読む】彼女がホストにハマった理由…月250万円で満たされる承認欲求、身体を売ってでも貢ぎ続けたい
AUTHOR

高史 大宮


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