アイドルになったばかり、よちよち歩きのメンバーは、先生の指導を言われるままに吸収した。映像にも残っているが、指導は厳しかった。メンバーは食らいついた。その結果、AKB48とは違うステージを作り上げ、それがSKE48の個性となっていった。
2009年、チームSは2つのオリジナル公演を上演しているが、ともにアンナ先生の手による振り付けである。その曲たちはいまだに色あせておらず、特に『恋を語る詩人になれなくて』のインパクトは絶大だ。その振り付けは運動量が多く、明るく、ユニークだった。
公演曲以外にも、SKE48では『青空片想い』『ごめんね、SUMMER』『パレオはエメラルド』といったシングル曲もアンナ先生が手掛けている。『パレオ~』はSKE48が『NHK紅白歌合戦』に初出場した2012年にも歌われており、自身が考案した振り付けをアレンジし、バレエ経験豊富な須田亜香里をフックアップしたり、器械体操経験のある研究生のバック宙を取り入れたりして、紅白仕様に再構築。今でもファンの語り草になっている。
ところが、2015年を最後にアンナ先生はSKE48の楽曲を担当することはなくなった。他の先生が考案した振り付けをメンバーは踊るようになっていった。
この頃、すでに国内にはアイドルグループが星の数ほど誕生していた。48グループだけではない。乃木坂46も結成されていたし、それ以外の事務所もアイドルビジネスに参入していた。曲の数だけ振り付けが存在するが、2010年代半ばにもなると、どのグループのどの振り付けも、さほど差がなくなっていた。SKE48の振り付けも個性という点において、他のグループと比較すると、特に目立つものではなくなっていった。その状況は何年も続くことになる。私はSKE48にはアンナ先生が必要だと考えていた。