おぼん あとはやっぱり根本のところで2人が同じところを目指していたという面もあるんじゃないかな。いくら相手がカネになるパートナーだったとしても、「俺は芝居をやりたい。相手は歌をやりたい」みたいな話だったらとっくに別れているはずだし。
こぼん うん、それもあるだろうな。
おぼん やっぱりね、俺もこの男(こぼん)も根っこの部分は似ているのよ。好きなものが同じなの。高校時代に2人で一緒に『ウエスト・サイド・ストーリー』を観て、カッコいいなって憧れた気持ちをいまだに持っている。要するにガキの頃に好きだったショービジネスだよね。ホテルのディナーショーとか、世界一周クルーズにゲストとして呼ばれショーをやるとか……。
──おぼん・こぼんさんはタップダンスや楽器演奏もこなしますが、ベースには昔のショービズに対する憧憬があったわけですか。
こぼん そうそう。それしか今までやってこなかったしさ。昔のミュージカルでは、必ず狂言回し的な面白いコメディアンが出てきてね。自分が歳を取っても、ああいうポジションでいたいなと夢見ていたんだ。
おぼん サミー・デイヴィスJr.みたいな本物のエンターテイナーになりたいと俺は思っていたけど、こいつもこいつでまったく同じことを考えていたの。間違いなく感性は似ているんだよ。歌でハモるときも2人ならバッチリだし。今じゃ俺たちも73歳になったけど、これで80歳、90歳になってもタップ踏んでいたらカッコいいじゃない。
──最高です。このあたりは今の若手芸人にないセンスでしょうね。
こぼん 育ち方が大きいと思う。僕らは寄席とかお笑いライブで育ったわけじゃなく、キャバレーとかクラブで育った人間だからさ。
おぼん やっぱり変わりようがないよね、若い頃に培ってきたものは。
──さて今回、おぼん・こぼんさんは芸歴15年以上が対象となる『G-1グランプリ』の総合司会を務めることになりました。
おぼん G-1の「G」は何の略? まさか芸歴15年だからって「ジジイ」じゃないよな(笑)。
こぼん 「地肩」らしいよ。つまり「実力はあるけど、いまいち埋もれている芸人」ってことじゃないの?
おぼん なるほどね。でも、売れる・売れないは不確定要素も大きいよ。たとえば去年の『M-1グランプリ』(テレビ朝日系)で優勝した錦鯉にしたって、俺らの間では面白いってずっと言われ続けていたのよ。にもかかわらず、売れなかった。今のコンビになる前の時代も知っているし、ピンでやっていたことも覚えている。結局、大事なのは回ってきたチャンスをモノにできる嗅覚じゃないかな。