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UPDATE|2020/06/03

元AKB48渡辺麻友が芸能界を電撃引退、最後の瞬間まで忘れなかった“まゆゆの信念”とは

2015年に発売された渡辺麻友ソロシングル『出逢いの続き』



2017年、総選挙のスピーチ中に卒業を発表すると、同年10月、地元・埼玉で卒業コンサートを開催。大晦日の『NHK紅白歌合戦』を最後にグループから旅立った。卒業後は女優として舞台やドラマに出演していた。

AKB48時代のまゆゆのハイライトを挙げるなら、2014年の総選挙だろう。圧倒的有利と目されていた指原莉乃を破り、初の1位を獲得した、あの年だ。会場の日産スタジアムは、指原ファンの悲鳴とまゆゆファンの歓声でカオスに陥った。報われなかった正統派が頂点に立ったことは多くの観客にカタルシスをもたらした。

まゆゆといえば、真面目さが売りだった。卒業直前で取材した際の、こんな言葉が記憶に残っている。

「活動で大事にしてきたことは、腐らないことです。アイドルとしてのまゆゆは、真面目にやってきましたね。真面目すぎるくらい真面目で、ちょっと大変な時もありましたが……。そっち側が正当化されるとちょっと……。まあ、正解なんてないんですけど、考えても答えが出ないですね」(2017年8月)

まゆゆの話す「そっち側」とは、「スキャンダルを起こした側」という意味だ。真面目に活動している自分としては、「そっち側」にスポットライトが当たることに納得がいかない。ただ、それで腐っても始まらない。芸能の世界は正しさだけで成り立っているわけではないからだ。結局のところ、自分は自分の考える道を歩くしかない――。そんな意味の言葉だった。

別の機会にはこんなことも話している。

「なかなか(前に)進まなかったです。もどかしかったし、いつ報われるのかな、と。いつかは絶対気づいてもらえるから、その日まで頑張るしかないと思っていました。ひたすら頑張ってましたね。努力は無駄にならないだろうし」(2014年7月)

まゆゆの考えを支持する後輩は多かった。メンバーばかりか、そんな姿勢はファンにも伝わっていた。まゆゆがトップ・アイドルでいられたのは、アイドル・サイボーグと呼ばれるような、徹底したかわいらしさのみが理由ではなく、曲がったことに背を向ける真面目さもまた支持されていたのだ。「後輩には、私と同じ思いをしてほしくない」。そんなこともよく口にしていた。まゆゆの姿勢は「アイドル、かくあるべし」と手本になり、フォロワーに大きな影響を与えた。

真面目さと同時に、繊細さを持ち合わせた人でもあった。同期の柏木由紀のように、一度心を許した人にはすべてをさらけ出し、ふざけ倒すが、そうでない人とは一定の距離を保っていた。ファンや世間から自分がどう思われているか、常に気にしていた。

AUTHOR

犬飼 華


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