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UPDATE|2024/03/09

『ブギウギ』福来スズ子と茨田りつ子、対照的な二人を結び付けた”共通点”とは

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りつ子は第一印象でプライドが高く気難しいイメージを持たれがちだが、実はとても繊細で情に厚い人だ。「自分は今こう思っている」と察知する能力に長けていて、他人にも自分にも正直である。だからこそ、弱っているときは弱っている、怒っているときは怒っていると、自分の感情を周囲にさらけ出せているのだ。特攻隊員を前にしたステージの後泣き崩れる姿や、スズ子と対立してしまった時に自ら謝れる素直さなど、知れば知るほど人間らしい部分が見えてくる。

反対にスズ子は、一見、楽観的で何の苦労もしていないように見えるだろう。スズ子の背景を知らないパンパンガールから「お気楽」と言われたように、周囲からは陽のオーラを放つ、眩しいスター歌手に見えていたはずだ。だがその明るさの裏には、家族を失った悲しみや「一人で愛子を育てなければ」という使命感が隠されている。

何でも気にせず自分の感情をさらけ出しているように見えるスズ子だが、それは基本周囲の人に対する「義理」「人情」「使命」が働いた時だけ。自分自身の感情には鈍感で、悲しみや苦労を内へ内へと隠しこんでしまう。自分の生まれや、家族との別れについても「こんなに苦労してきたんでっせ」と言えそうなタイプに思えるが、必要以上に口を開くことはない。実はステージ上で輝く”福来スズ子”と”花田鈴子”の間には大きなギャップがあるのかもしれない。

そんなスズ子とりつ子の共通点を考えていたとき、”大胆さ”というキーワードが思い浮かんだ。りつ子の思い切った行動や発言は、視聴者の中でも「さすがりつ子様」と話題になることも多い。最近は、愛子の子守りを買って出たり、家政婦・大野晶子(木野花)を送り込んだりと、スズ子が「NO」と言えないように大胆な手助けをしていたのが印象的だった。

スズ子の大胆さについては、ここまで『ブギウギ』を見てきた視聴者には説明いらずだろう。時には勢い余って裏目に出ることもあったが、親友のタイ子(藤間爽子)を救ったり、おミネ(田中麗奈)たちと仲を深めたりと、踏み切った行動で仲間との輪を築いてきた。

正反対の二人の距離が近づいたのも、お互いの大胆さが発揮されたからだろう。りつ子は普段の辛口な物言いから、周囲に忌み嫌われることもあったかもしれないが、そんな中で物怖じせずに立ち向かってくるスズ子の存在は新鮮だったはずだ。スズ子もりつ子の大胆さのおかげで大野と出会え、母として一歩成長することができた。

近すぎず、遠すぎず、でもお互いのことをどこかで気にかけ、そっと手を差し伸べられる…スズ子とりつ子はそんな絶妙な距離感にいるのだろう。二人の関係を心底羨ましく思うのと同時に、我々もその大胆さを見習いたいものである。

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AUTHOR

音月 りお


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