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UPDATE|2024/02/22

児童虐待、性加害、SNS…インド映画が訴える強烈な社会風刺、Netflix『バクシャク -犯罪の告発-』

Netflix『バクシャク -犯罪の告発-』

インドでは麻薬取引きや人身売買、性加害といった社会問題を多く抱えており、そういったものを題材としたサスペンスやスリラーが年々多く制作されてきている。これらは決してインドだけに限られた問題ではなく、現代社会に生きる誰しもに通じるテーマでもある。Netflixで配信が開始された『バクシャク -犯罪の告発-』では、児童保護施設での女児虐待というおぞましい事件が隠蔽されていることを知った、地元の報道記者が真相を追う…。

日本においてインド映画というと、劇場で公開されるエンタメ性が高いものばかりを想像するが、配信作品では、毎週のようにサスペンスやスリラーが配信されている。インド本国はもちろん、アメリカやヨーロッパと比べれば、まだまだ観られる作品は限られているが、それでもいくつかの作品は日本では観ることができる。しかし、配信系作品はあまり話題にならず勿体ない。

日本で公開されたことのある作品でいうと、ラーニー・ムケルジー主演の『女戦士』(2014)やNetflixで配信されている『ソニ』(2018)などもそうだ。

レーティングに縛られることがあまりなく、表現の幅が広い配信作品にこそ、実はインドの世界に伝えたい”今”が詰まっているのだから、もう少し目を向けてもらいたいものだ。

闇に埋もれていた犯罪を告発するような内容の作品が増えた大きな要因としては、インターネットの普及によって、声をあげることのできる場が確立されたことが大きい。

『バクシャク -犯罪の告発-』では、世間を揺るがすほどの重大な事件を扱っているというのに、知名度の無い弱小局の報道記者ゆえに、伝わらない苦悩が描かれているのも印象的であった。

知名度やエンタメ性が重要視され、発信力が無い地方や弱小メディアの報道は見過ごされてしまっている。そんな事件もあるということにも気づいてもらいたい、ひとりひとりが気づく力を付けることが必要とされる、そんな情報社会に対するメッセージも込められられているのだ。

ただ、例えエンタメ性の高いニュースの場合であっても、一時は騒がれるものの、そのうち何事もなかったかのようになってしまう。

根本的な問題や、そこにいたる負のサイクルや社会構造やシステムについては掘り下げられず、また同じような事件が起きたときには騒ぐだけの繰り返し、そんな実情にも警鐘を鳴らす。多くの人は見たくないもの、知りたくないものには蓋をしてしまう。それが現実という強烈な社会風刺でもある。

その点では、角度としては全く違うが、Netflixで去年の12月から配信開始された『そして、見失ったのは』にも多少通じるものがある。


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