FOLLOW US

UPDATE|2023/10/04

『時をかけるな、恋人たち』時間SFの名手・上田誠が手掛ける脚本の“伏線回収以上”の凄み

『時をかけるな、恋人たち』ポスタービジュアル(公式Xより)


『サマータイムマシン・ブルース』のスタッフが再集結した2009年の映画『曲がれ!スプーン』(こちらも上田誠の戯曲が原作)も見逃せない。こちらは伏線回収の妙だけではなく、上田脚本の“温かさ”も感じさせてくれる作品となった

長澤まさみが演じる主人公・桜井米は、超常現象番組『あすなろサイキック』のAD。幼い頃から超能力の存在を信じているが、番組の募集に来るのはテレビで注目を浴びたいだけの“なんちゃって超能力者”ばかり。そんな矢先のクリスマス、米は偶然にも本物のエスパーが密かに集まる場を訪れることになる。(以下、映画のネタバレを含みます)

本物のエスパーは注目を浴びると被害を受けるため、番組ADの彼女に能力をバラすわけにはいかない。しかし、その集会に居合わせた”なんちゃって超能力者”が、純粋にエスパーを信じてきた米の変わらぬ子供心を裏切ってしまう。そこで、落胆する米を救うと決心したエスパーたちが、自分たちの能力であることを上手く隠しつつ、サンタクロースを空に飛ばして彼女に見せてあげる、というストーリーだ。

大人になると、多くの人が子供時代に抱いていた夢や幻想を信じるのをやめてしまうし、人と変わっていれば除け者扱いされることもある。そんな大人社会を揶揄しつつ、上田誠がスポットライトを当てたのは「大人になったからこそ、大人の対応ができる大人のかっこよさ」だ。それをコミカルに描くからこそ、誰もがかつて持っていた子供心をくすぐられつつ、平和な解決策を提示してくれる脚本に救われた人も多いだろう。

この世にはまだない面白いものを作るために、偏ったことをなるべく表現するよう心がけているという上田誠。『時をかけるな、恋人たち』ではどんなカタルシスとどんなメッセージを見せてくれるのか、今から楽しみでならない。

【あわせて読む】注目女優・稲垣来泉、10月期ドラマ『時をかけるな、恋人たち』で吉岡里帆の幼少期役に決定

RECOMMENDED おすすめの記事