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UPDATE|2023/08/20

ケイト・ロータスの格闘技半生「誰にも勝てない、顔だけと言われるのが辛い」を救った母の言葉

撮影/松山勇樹

9月10日のDEEP JEWELS 42(東京・ニューピアホール)で須田萌里と対戦する総合格闘家のケイト・ロータス。空手や柔道、ボディビルで実績を残してきた彼女が、MMAでプロデビューしたのは2020年12月のこと。モデル級の美女ファイターとして一躍注目を集めたが、当人としては複雑な思いを抱えていたという。

【写真】美女戦士ケイト・ロータスの撮り下ろしカット【7点】

「地元の友達とかは『すごいね。格闘家になったんだ』とか連絡をくれたんですけど、ネットでは容姿についてディスってくる人も結構いました。美人とか可愛いって言われる事もありますが、結局は個人の主観じゃないですか。見た目だけで中身の空っぽな人物像にされたこともたくさんあります。

あとは実力以上に騒がれたことで、お母さんやお兄ちゃんからは『勘違いするなよ』って警告されました。たしかに今思えば、調子に乗っていたところがあったんでしょうね。自分では真剣に練習しているつもりだったけど、たとえば夜練だけじゃなくて朝練もできたんじゃないかという気もするし……」

当時のケイトにはスポンサーもおらず、仕事を続けながらの選手生活だった。実家暮らしとはいえ、光熱費は半額は払うのが母との約束。本人は「甘えがあった」と振り返るが、限られた環境で可能なことを精一杯やっていたのは間違いないだろう。こうして強さを貪欲に追及する中、出稽古で訪れた東京のジム・K-Clann(代表・横田一則)で大きなショックを受ける。

「一昨年の夏です。実際に肌を合わせながらK-Clannメンバーの強さを知って、愕然としました。『本当に自分は強くなろうとしていたのか?』『今までやっていた練習は何だったのか?』とか、そこまで思い詰めましたね。稽古が終わってからすぐにKING GYM KOBEの代表に連絡し、『しばらく東京で頑張りたい』と相談したくらいです」

 K-Clannの中でも衝撃的だったのは、RIZINで無敗ロードを突き進む伊澤星花の圧倒的な実力だった。伊澤とケイトは同じ年であることに加え、MMAを始めた時期もほぼ一緒。そのため、ことあるごとに周囲からは比べられたという。なんだったら当時はケイトのほうがメディアに露出していたくらいだが、ジムでスパーリングをすればボロ雑巾のようにやられてしまう。惨めだった。プライドは木っ端微塵にへし折られた。

「今は星花さんのことを大尊敬しているし、セコンドにもついてもらって頭が上がらない存在ですけど、その頃は側にいるだけで緊張しました(笑)。星花さんは性格もいいから、非の打ち所がないんですよね。何ひとつとして私は勝てるものがなかった。自分で望んで来たK-Clannですが、最初の半年くらいは毎日泣いていましたよ。

お母さんにも泣きながら電話して、『周りからはルックスだけだって言われるし、ジムの人のレベルに追いつかない。つらいことしかない』って泣いていました。そうしたら返された言葉が、『楽して生きてきたのは誰ですか? アナタは既にそんなに強かったの(笑)?』ってこと。たしかに私が遊び惚けている間も、星花さんは柔道とレスリングにひたすら打ち込んでいたわけで。それを指摘されたら、ぐうの音も出ないですよね。比べること自体が失礼に値すると言いますか。

 なにかそこで吹っ切れたんですよ。星花さんと比べられることもそうですけど、アンチも気にならなくなりました。自分は自分だし、結局は自分のやるべきことを粛々とやっていくしかない。メンタルが決定的に強くなりました」
AUTHOR

小野田 衛


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