FOLLOW US

UPDATE|2023/08/06

『VIVANT』“漫画的リアリティ”と“ツッコミどころのあるユルさ”が作り出す視聴者との共犯関係

『VIVANT』第4話では誤送金事件の真相が明らかに(TBS公式YouTubeより)


役者たちのアクの強い演技も見所の一つ。堺雅人は終始オドオドしている気弱キャラと、冷静沈着な強気キャラの二重人格というヤバい設定だし、阿部寛はいつもの傲岸不遜なアベちゃんだ。そこに一本芯が通ったキャラの二階堂ふみが加わることで、実力派3人によるアンサンブルが生まれている。

乃木を執拗に追い回すバルカ警察のチンギスは、漫画の『蒼天航路』に出てきそうな強面キャラでナイス・キャスティングだし、野崎の協力者ドラムは、その巨体と愛くるしい風貌、そして翻訳アプリの声のアンバランスさがクセになる。『VIVANT』の人物造形は、いい意味で漫画的なのだ。

正直言って、ストーリーもユルい。誤送金事故にはテロリストが関わっている、という事実を乃木はサムというCIA局員から仕入れる。他国に機密情報を勝手に渡してしまう、れっきとした背任罪だ。だがサムは“乃木は学生時代の友達”という理由だけで、あっさりと背任行為に手を染めてしまうのである。

第3話のクライマックスは、丸菱商事の特別ルームにあるサーバーに直接アクセスして、バックアップデータを回収するという展開だったが、少しでもITに詳しい者なら「今どきクラウドサーバーじゃなくて、オンプレミスの物理サーバーかよ…」とツッコミを入れてしまったことだろう。

漫画的リアリティ、ツッコミどころのあるユルさ。普通に考えたらマイナス・ポイントでしかないのだが、福澤克雄の高血圧演出と掛け合わせられることで、不思議とチャーミングな手触りになっている。鑑賞者もそれを許容し、それを楽しんでしまう共犯関係が築き上げられているのだ。

出演がアナウンスされているものの、まだ出番のない松坂桃李はいつ登場するのか。第1話の最後にちょこっとだけ出演した役所広司は、どのような姿で戻ってくるのか。そして日本の安全を影で守っているという「別班」とは、いかなる組織なのか。筆者も『VIVANT』に夢中である。第4話の放送を期待して待とう。

【あわせて読む】「親を許さない」…異色の学園ドラマ『最高の教師』が打ち破る“温い常識”
AUTHOR

ルイ 竹島


RECOMMENDED おすすめの記事