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UPDATE|2023/06/17

「初期AKB48にはイスラム武闘派と同時代性がある」ノンフィクション賞記者・田原牧の“推し活”

田原牧 撮影/西邑泰和

格差・貧困問題に取り組み、メディアで積極的に発言をしている作家・雨宮処凛が、バンドやアイドルなどを愛でたり応援したりする“推し活”について深堀りするコラムシリーズ。2回目のゲストは「ジャスミン革命」を取材し開高健ノンフィクション賞をとった記者・田原牧さん。初期AKB48にハマり、当時のAKB48はイスラム武闘派のアルカイダと同時代性があるとまで指摘する。一体どういうことなのか、話を聞いた。文・雨宮処凛(前後編の前編)

【写真】推し活について語る、田原牧と雨宮処凛

2011年、エジプトで起きた「革命」の瞬間に居合わせた人がいる。

それは田原牧さん。アラブ世界を見続けてきたジャーナリストだ。多くの人が押し寄せたタハリール広場には、最終局面を迎えるまで軍の戦闘機が威嚇飛行していたというから命がけの取材である。

そうして書き上げた『ジャスミンの残り香 「アラブの春」が変えたもの』は14年の開高健ノンフィクション賞を受賞。

そんな田原さんと初めて会ったのは10年以上前の連合赤軍のイベント。その後も飲み会などで会う機会があったのだが、何度目かに会った時、「とにかくBiSHがすごい!」となんの脈絡もなく熱弁されたことが印象に残っていた。また、著書『人間の居場所』では、シリア難民やイスラム国などの話題に混じってAKB48にハマった経験も書いている。「アラブに詳しいジャーナリスト」なのに、背後にちらつくアイドルの影。しかも久々に連絡をとったら、最近はヴィジュアル系バンド「0・1gの誤算」に注目しているというではないか! バンギャ30年選手である私もここ数年、彼らから目が離せない。

ということで、田原さんに「推し活」について話を聞いた。

ここでまず田原さんの経歴を簡単に紹介しよう。

62年生まれ、現在61歳(見えない!)の田原さんは高校時代に「三里塚闘争」に参加。成田空港建設に反対して農民や学生らが立ち上がった歴史的な闘いだ。70年代、「政治の季節」の名残がまだ残っていた時代のことだ。

大学時代からはジャーナリストとしてアラブ各地を巡るようになる。が、25歳の頃、内戦中のレバノンを取材中にシリアの秘密警察に捕まり、処刑寸前に。なんとか解放され、生還した後は中日(東京)新聞に入社。カイロ留学などを経て97〜2000年までカイロ特派員となり、現在も東京新聞記者。そんな田原さんは18年、トルコのサウジアラビア大使館で殺害されたジャーナリスト、ジャマル・カショギ氏と面識があったり、パレスチナゲリラや日本赤軍との繋がりを感じさせる話題がさらっと出てきたりとなかなかに物騒な人だ。

ちなみに田原さんの「師匠」は、「反骨のルポライター」と呼ばれた竹中労氏。91年に死去しているが、最晩年は熱烈に「たま」(バンド)を推し、『「たま」の本』まで出版したという逸話の持ち主だ。

そんな田原さんを最初に「ヲタ」にしたのがAKB48だった。


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