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UPDATE|2023/03/19

育休復帰、ぼる塾・酒寄が語る3人への感謝「お母さんの私と 芸人の私を同じくらい大事にしてくれる」

ぼる塾 酒寄希望 撮影/松山勇樹



1人だった相方が3人になり、グループのエピソードにも厚みが出たという酒寄。発信の場もTwitterからnote、そして本へと、拡がりを見せていった。もともと子供の頃から読書が趣味だったという彼女は、特にエッセイを好んで読んでいたという。

「三浦しをんさんや吉本ばななさん、江國香織さん、阿川佐和子さん、そしてさくらももこさんの作品が好きで、愛読しました。小説や漫画の分野をメインに活躍されている方々のエッセイを読むと、“あの作品を書いている方はこういうことを考えているんだ”と感じられて、それが面白いですね。何気なく書かれているその人それぞれの日常が、作品の世界観と繋がっているような気がするんです」

なかでも特に心惹かれるのは、さくらももこ作品の“暮らしの描写力”なのだそう。

「さくらももこさんの作品に、自転車を漕いでいたら揉めている男女を道端で発見したっていうお話があるんです。男女が話している内容が気になりすぎて、石焼き芋屋さんくらいゆっくり自転車を漕いだ、という。“揉めている人たちの会話を聞こうとした”と書けばよくあるお話なのですが、“石焼き芋屋さん”と表現することで、爆笑エピソードにしてしまってるんですよね。平凡な暮らしのワンシーンを笑いに変える、さくらさんの表現が大好きです」

何気ない日常をユーモアへ変える創造力は、酒寄自身のエッセイからも感じられる。読者の笑いと共感を誘うその魅力について、本人は「常に面白い出来事を起こしてくれる3人のおかげだと思います」と、控えめに分析する。

「エピソードをエッセイに書いていいか3人に許可をとるたび、“あそこは確か、ああだったね”“あの時はこう言ってた”と、それぞれの記憶や思っていたことを皆が共有してくれるんです。そうやってコミュニケーションを取るうちに、もともとコンビを組んでいた田辺さんだけじゃなく、あんりちゃんやはるちゃんともやり取りが増えて、より仲良くなれたような気がします」

育休中はエッセイ執筆だけでなく、ネタ作り担当としてぼる塾を支え続けてきた酒寄。ZOOM越しに共同作業をする機会も多かったという、同じく「ぼる塾のネタ作り担当」のあんりは「お子さんの面倒を見ながら参加してくれる酒寄さんは、本当に凄いと思う」と尊敬の念を表している。一方で酒寄も、自身の創作活動はメンバーの存在あってだと語った。

「有り難いことに3人とも、“お母さん”である私と“芸人”である私を、どっちも同じくらい大事にしてくれているんです。私という、一人の人間として見てくれているというか。息子のことも、“酒寄さんの子供だから可愛がろう”というより、“ぼる塾の友だちだから仲良くしたい”というスタンスで接してくれています。そういう人たちとお仕事をしていると自然に、暮らしの延長線上で仕事ができるようになって、日常と創作が地続きになっている気がします。ムリに気持ちを切り替える必要がないので、自分のペースで活動することができていますね」

【後編はこちら】ぼる塾・酒寄が育休中に多彩な創作活動「田辺さんだけのために小説を書いた」
AUTHOR

菅原 史稀


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