昨年秋から放送されているNHKの朝ドラ『舞いあがれ!』。そのタイトルや序盤のストーリーから、すっかりヒロインがパイロットを目指す物語だと思っていた視聴者も多いだろう。実際に、福原遥演じるヒロインの岩倉舞は、航空学校にも通っている。ところが、年末年始から少しずつ状況が変わりはじめ、リーマンショックと父親の死をきっかけに実家の工場で働くことになった。いったい、このストーリーの転換にはどのような狙いがあったのだろうか。
【写真】パイロットから町工場へ『舞いあがれ!』場面写真【5点】「もちろんパイロットになる、空を飛ぶ夢を持つヒロインということでスタートしているんですが、現実には夢ってなかなかそのままの形で実現することって少ないと思うんですよ。むしろ、いろんな紆余曲折を経て、そこでの経験だったり、出会った人だったり、そういうものが活かされる形で最終的に夢につながっていく。それが、この作品の形として描こうとしていることなんです」
こう話してくれたのは、『舞いあがれ!』の制作統括・熊野律時チーフプロデューサーだ。
「思っていたのとは違う方向に進んで行ってしまったと思っても、ある瞬間に自分がやってきたことはムダじゃなかった、今やっていることに全部つながってきているんだなと気がつく。そういうことがあると思うんです。
ですから、ヒロインがいろんなことを経験して、終盤になって違う形かもしれないけれど、また空に向かっていく。紆余曲折を経た中で、ヒロインの中にそのすべてが積み重なって空に向かっていく夢がもっと豊かな、広い意味を持つということを描きたいなと思っています」