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UPDATE|2023/03/05

大河ドラマ抜擢・乃木坂46久保史緒里、強烈な存在感も持つ"武器"に注目

久保史緒里『Platinum FLASH Vol.18』(光文社)


その転機となったのは間違いなく『夜は短し歩けよ乙女』だろう。同作は根強い人気を持つ原作の舞台化という難しさを伴う公演だったのにも関わらず、久保は黒髪の乙女という快活な少女をまるでひとりの人生を歩むかのように自然に演じてみせた。中でも劇中曲「夜は短し歩けよ乙女」のポエトリーリーディングを歌う久保の姿には高揚感を覚えた。

それより前に放送された『クロシンリ 彼女が教える禁断の心理術』では多様な表情を巧みに演じ分ける。ブラック心理術を操り、人々を翻弄していくという役を演じた久保は本編の序盤に鋭い毒舌を吐いてみせたり、心理術が役に立たないと難癖をつけられたときには声を荒げて力強い目線を向けたりと、久保の喜怒哀楽がこれほどまでに凝縮されているのが本作。またこれとは対照的にパルコ・プロデュース2022 舞台『桜文』では、明治期の吉原遊郭を舞台に可憐で耽美な演技にも挑戦した。あるいは『左様なら今晩は』では生前に恋愛経験のないウブでピュアな幽霊の愛助を、久保本来のナチュラルな感覚で演じてみせた。

これらに共通するのは久保の表情の豊かさだ。表情で全てを語ってしまえる役者……といったら大げさだろうか。中でも驚かされたのが『桜文』での静から動への表情の変化。一切笑わないと噂の花魁桜雅が小説家の霧野一郎と出会い、表情がだんだんとほぐれていく姿は久保の真骨頂が現れた瞬間だった。同舞台への出演を振り返って、久保は「一番苦しかったです。(中略)桜雅という役に気持ちが引っ張られて苦しくなったりもしました」と難しさを語っていたが、役へと真摯に向き合い完成された桜雅の佇まいは久保だからこその味わいが生まれていた(参考:『日経エンタテインメント! 乃木坂46 Special 2023』)。

そして、そんな久保が『どうする家康』で演じるのは、徳川家に嫁いだ信長(岡田准一)の娘・五徳。3月3日現在ではまだ本編への出演はないが、「気品にあふれ、気が強いが、心根は優しい」という五徳のキャラクターは久保が挑んできた役を考えるとまさにぴったりな役だろう。久保がこれまで演じてきたキャラクターはどれでも確固たる芯を持っており、うちに秘めた強さが表情やセリフなどから滲み出ていた。久保がこれまで見せてきた力強い存在感は、大河ドラマを構成する上で大きな役割を担っていくことだろう。

舞台を始め、ドラマや映画で強烈な存在感を示し、大河ドラマ出演という快挙を成し遂げた久保。今では朝ドラに出演している山下と並びグループを牽引する存在となっている。かつて生田絵梨花がグループでミュージカル俳優としての道を開拓したように、久保もまた乃木坂46という看板を抜きにしてひとりの俳優としての活躍が期待できるメンバーだ。国民的ドラマ枠ともいえる大河ドラマは久保にとって重要な転機となるはず。さらに2023年には『探偵マリコの生涯で一番悲惨な日』の出演も控えている。まずは久保の次なるフェーズに向けて、『どうする家康』で五徳をどう演じていくのか、注目したい。

【あわせて読む】大河ドラマ&朝ドラ出演、乃木坂46久保史緒里&山下美月が紡いできたライバル物語
AUTHOR

川崎 龍也


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