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UPDATE|2022/12/30

大晦日RIZINに参戦、闘うフリーター・所英男が闘い続ける理由「天国のKIDさんに認めてもらいたくて」

撮影/松山勇樹


──そのKID選手が亡くなったことで、心にぽっかり穴が空いた部分も大きかったのでは?

所 そうですね……。だから自分の試合が3年半空いてしまったのは、結局、そういうことなんだと思います。やっぱりやる気というか、目標がなくなっちゃいましたよね。最後、KIDさんと闘って現役を辞めたいという気持ちがあったので。QUINTETという桜庭和志さんが始めたグラップリング大会には出ていましたけど、総合に関しては……正直、やる意味が見出せなくなっていました。

──それでも20年の大みそかにはRIZINに復帰し、太田忍選手に一本勝ちしています。参戦を決めたのは何か心境の変化が?

所 ひとつは、コロナ禍でも続けてくれたジムの会員さんに試合を見てもらいたいという思い。ジムの若い子たちの頑張りにも触発されました。もうひとつは、同年代アラフォーのベテラン選手が頑張っている姿を見て、僕も刺激を受けたことですね。

──以前、「長く続けていると頑張る理由が出てきて、なかなか辞められなくなる」といった趣旨の発言をしていました。今の所選手にとって、辞められない理由とは?

所 やっぱりいろんな想いを背負っていますからね。なんらかの理由でこの競技を辞めなきゃいけない人も見てきたし、中には亡くなった人もいますし……。それを考えると、簡単には辞められなくなっちゃいますよね。

──かつての盟友、レミギウス・モリカビュチス選手がリトアニアで射殺されるという痛ましい事件も起きました。

所 レミギウスもそうだし、宮下(トモヤ)さんもそう。KIDさんはそんなにお付き合いがあったわけじゃないけど、自分にとっては大きな存在ですしね。

──今は目の前の試合に集中しているはずですが、もし自分の格闘人生にピリオドを打つとしたら、それはどんなイメージになるでしょうか?

所 「次の試合で終わりにする」とか公言すると、大体、みんな負けるんですよ。僕、そのパターンは嫌なんですよね。とりあえず目の前のジョン・ドッドソン戦に関しては、ひとつ“秘策”がありまして。それは金原さんがKIDさんと試合したときに開発した技なんですけど(※結果は金原の判定勝ち)、今はそれを繰り返し練習しているところなんです。だから対戦相手はジョン・ドッドソンなんだけど、自分の中ではKIDさんと闘う気持ちで今はいて……。今回、勝てばKIDさんに認めてもらえるんじゃないかと思っているので……。

 ここまで語ると、所は感極まったように大粒の涙をこぼし始めた。「ダメっすね。年を取ると、すぐ泣けてきちゃって」と苦笑いしたあと、「でも練習がキツいときは『打倒・山本KIDさんだ!』って自分を追い込んでいるんです」と神妙な面持ちで前を向いた。
AUTHOR

小野田 衛


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