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UPDATE|2021/02/06

日本で最も恐れられる雑誌、なぜ『週刊文春』ばかりがスクープを取れるのか?

スクープの裏側を追ったノンフィクション『2016年の週刊文春』(光文社)


一般には誤解されがちだが、『週刊文春』はネタをお金で買ってきているわけではない。交渉にもそもそも応じていない。告発者側もお金欲しさに情報を流しているわけではないのだ。(※詳細は『2016年の週刊文春』を参照)

「たかが週刊誌が何百万円も何千万円も払えませんよ(笑)。20万円や30万円をもらったところで、会社を辞めさせられたら割に合わないじゃないですか。芸能系のスキャンダルだって、自分の友達を20万円や30万円で売ろうなんて普通は思わないでしょ? 100万円だろうが話は同じ。内部情報をリークするのは、『こんな不正を許してはならない!』という気持ちからですよ。カネの問題じゃない。

森友文書の改竄をやらされて、自殺に追い込まれた近畿財務局の赤木俊夫さんの遺書にしたって、あれを『文春』が載せなかったら世の中に出なかったかもしれない。果たしてそれでいいのか?  っていう話ですよ。文春の記者たちは『俺たちがスクープから下りてしまったらほかに誰がいるんだ?』というプライドを持って事件を追っている。記者クラブというなかよしクラブの中で権力者に従順に飼いならされている連中とは一緒にしてもらいたくない、と」

もちろん『文春』だって商業誌である以上、ビジネスという側面から逃れることはできない。広告主や作家の顔色を伺うこともあるだろう。しかし、最後はやはりジャーナリズムとしてのプライドの問題になってくる。

「JR東日本に喧嘩を売ってキオスクでの販売を拒否されるなんて、ビジネスの面からしたら愚の骨頂かもしれない。でも、労組が革マルに支配されて、革マルになびかない人間が散々嫌がらせを受け、いじめ殺された人もいると聞けば書くしかない。それが雑誌ジャーナリズムの根本です」

目先の損得勘定よりもはるかに大事なものがこの世にはある。下世話だと指摘されることも多い『文春』の報道姿勢だが、その実態は闘う男たちの矜持によって支えられていた。


▽『2016年の週刊文春』(著者:柳澤健/発行元:光文社)
列島を震撼させるスクープを連発し、日本で最も恐れられる雑誌となった『週刊文春』。そのスクープの裏側には愚直な男たちの物語があった。花田紀凱と新谷学、『週刊文春』をトップにした2人の名物編集者の話を軸に、記者と編集者たちの熱き闘いの日々を描いた痛快無比のノンフィクション。著者は『1976年のアントニオ猪木』『1984年のUWF』などで高い評価を得るノンフィクション作家・柳澤健氏。
AUTHOR

小野田 衛


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