新しい劇場は福岡PayPayドームに隣接するエンターテインメント施設『BOSS E・ZO FUKUOKA』の1階に入る。旧劇場があった場所の近くに「戻る」イメージだ。この施設は新たな観光名所になることが見込まれており、その1階に「HKT48」の看板を掲げることは、それだけでも大きなプラスになる。
さらにネーミングライツ契約を締結したことで、正式な名称は『西日本シティ銀行 HKT48劇場』に決定。地域に密着してきた活動が新たな拠点で実を結んだことになるが、村重が「家を守る」という責任感を背負うのは、きっと、そういう側面があるからだろう。
すでに『BOSS E・ZO FUKUOKA』自体はオープンしているが、劇場に関しては「10月下旬オープン予定」というざっくりとしたアナウンスしかない。コロナ対策を講じた施設の最終調整作業もあるし、観客を入れての劇場公演に関しては今後の感染状況を慎重に見据えながら決めていかなくてはならない。
ただ、すでに「箱」はそこにあり、選抜メンバーがソーシャルディスタンスを守る形でステージに立った、という事実は揺るがない。
いまエンターテインメント業界では、明日の予定すら立たないのが当たり前の状態になっている。そんな中で新劇場のオープンを控えているHKT48は「希望の光」だ。もし、10月のオープンが実現すれば、11月26日には「9周年記念公演」も行われるだろうし、9周年を迎えるということは、その日から記念すべき10周年へのカウントダウンもはじまる。2021年11月26日まで明るいニュースが確定しているのは、こんな閉塞した状況で救いとしか言いようがない。
「私もまだ実感がないというか、ホーム感はあまりないんですよ。まだ1回しか行っていないし。ただ、9年前にはじめて劇場に足を運んだときの衝撃はいまでも鮮明に覚えています。天井が高くて、ステージも広くて、セリも上がる。ここが私たちの劇場になるんだ。すげぇ!って」
笑みを浮かべながら、まるで昨日のことのように9年前の思い出を語ってくれたのは、こちらも1期生で現在、チームHのキャプテンを務める松岡菜摘だ。
「新しい劇場にはレッスン場が併設されているんですけど、まだそこへの引っ越しもできていないんですよね。きっと、実感が沸くのはそうやって順を追って話が進んでいってからなんでしょうけど……それを待っていてはいけないなって。だから、1期生で集まって話し合いとかもよくするようになったんですけど、そこで変わったなって思うのが、やっぱりシゲ(村重)なんですよ。私たちだけの話し合いの場だけでなく、スタッフさんに意見を言うときにもシゲがすごく真面目に語ってくれるんです」
ただ待つだけではなく、明日のために自主的に動き出した1期生。
そして「大人たちに意見を言うとき」とは?
水面下でのメンバーの動きは、9年近い歴史の中でもっとも濃密で激しいものになっていた。
(つづく)
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