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UPDATE|2019/10/26

石破茂 元防衛相「日韓関係は修復不可能だと努力を放棄していいはずはない」【井上咲楽の政治家 直撃〜後編〜】

左から井上咲楽、石破茂 撮影/荻原大志



石破 「韓国けしからん!」と言っている人たちが、どれほど韓国と個人的なつながりを持っているのかは分かりません。だけど、日本にも韓国にも長く協力しながら商売をしてきた人たちがいるわけです。身近なところで言えば、韓国からの旅行客で賑わっていたホテル、旅行会社もたくさんあります。それが日韓関係の悪化を受けて、旅行を自粛する、取引を打ち切るとなれば、どうなるか。そういう現場の声はなかなかメディアに取り上げてもらえない。

井上 確かに、大きな声を出した人が勝ちみたいな印象があります。

石破 安全保障の面から言っても、日本と韓国の関係が悪くなれば、東アジア全体が不安定になっていきます。日本とアメリカ、日本と韓国、韓国とアメリカ。3カ国の信頼関係がないと地域の安定のためのバランスが崩れてしまいかねない。今、政府の対応を見ていると、「しばらくこのままでいくしかないね」という考えがずいぶんと広がっているように感じます。でも、それは地域の平和と安定に決して寄与しない。もちろん、「これで解決!」ということにはならないと思います。今までだって日韓の間にはいろいろな問題がありました。それでも、ずっと関係が悪かったわけではない。さっき井上さんが言ったK-POPやJ-POPが好きな若い世代のためにも、修復不可能だと努力を放棄していいはずはない。でも、そんなことを言っているから、私はウケないんだろうね(笑)。かなり変わった政治家だという自覚はあります。でも、人気取りや偉くなるために政治家をやっているわけじゃないですから、物事は納得いくまで調べ、自分の言葉で発言していきたい。それが大事なことだと思っています。

(『月刊エンタメ』2019年11月号掲載)

「取材を終えて」~井上咲楽の感想~
石破さんが現場との近さにこだわっているところは総裁選のときにも感じましたが、今回改めて、凝り性だからこそここまでディープにお仕事と趣味に取り組めるんだろうなと思いました。心から何かを伝えたいと思っている人は、にじみ出る熱意がもう強いです。今月行われた内閣改造では、石破派からの大臣はいませんでした。ここから石破さんが永田町でどう存在感を示していくのかに注目しています。

石破議員が<新たに選挙権を得た若い世代>に読んでほしい1冊

『昭和16年夏の敗戦』(猪瀬直樹 著/中央公論新社 刊)
人間は辛いこと、悲しいことを忘れよう、忘れようとする生き物です。だけど、忘れてしまったらもう1回同じことが起きるかもしれない。だから、何であんな戦争を始めてしまったのか。どうして大勢の人が死んでいったのか。常にリマインドしていかないといけないのだと思います。そういう意味で、「開戦前の昭和16年の夏に、アメリカと戦争をしても絶対に勝てないという指摘があった」という歴史を掘り起こしたこの本は非常に重要な1冊だと思っています。

▽井上咲楽(いのうえ・さくら)
1999年10月2日生まれ、栃木県出身。A型。現在は『アッコにおまかせ』(TBS)などバラエティ番組を中心に活躍。
Twitter:@bling2sakura

▽石破茂(いしば・しげる)
1957年2月4日生まれ、鳥取県出身。自民党所属衆議院議員。慶應義塾大学法学部卒。旧防衛庁長官、防衛大臣、国務大臣地方創生・国家戦略特別区担当、自民党幹事長などを歴任。
CREDIT

取材・文/佐口賢作 撮影/荻原大志


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