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UPDATE|2024/03/14

新進気鋭の映画スタジオ「A24」はなぜ凄い!? アカデミー賞常連、話題作が続く理由【有村昆が解説】

ボーはおそれている

アリ・アスター監督の『ボーはおそれている』が大きな話題となっている。制作は気鋭の映画スタジオA24だ。A24といえば、第95回アカデミー賞では、A24が手掛けた『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』が作品賞・監督賞・脚本賞をはじめ7部門で受賞するなど、アカデミー賞の常連。なぜ、映画界でA24の躍進がめまぐるしいのか、有村昆が解説する。

【関連写真】『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』場面写真

『ボーはおそれている』、これがまた凄い映画です。アリ・アスター監督は、いい意味で頭おかしい。それにホアキン・フェニックスという、いい意味でヤバい役者が主演なので、かなり濃厚です。さらに上映時間が3時間もあって、その間、本当に嫌なことしか起こらないというか、不安な感覚がずっと続くというホラーともコメディともいえない作品に仕上がっています。

物語としては、ボーという中年男性が、実家にいるお母さんに会いに行くという話なんですが、その道中でいろいろなことが起こってぜんぜん先に進めない。しかも、お母さんが首がなくなった状態で発見されたという連絡が入って、ボーがいないと埋葬できないから早く帰ってこいと急かされる…。

アリ・アスター監督は『ヘレディタリー/継承』や『ミッドサマー』でも、イヤ~な描写を連発してましたが、今作は精神的にも責めてきます。

映画の冒頭で、ボーは精神科の先生から薬を飲むときに必ず水を飲むようにといわれます。でも、そういう時に限って水がない。蛇口をひねっても、修理中なのか1適も出てこない。仕方がないので、家の目の前にあるコンビニに水を買いに行くんだけど、街が荒れ果てていて、家を出るだけで危ない。それでもなんとか辿り着いて水を飲むんだけど、カードが使えなくなっていて、現金で払おうと思ったら小銭がない。それでモタモタと時間がかかってる間に自分の部屋に街の人たちが侵入して荒らされ放題に…と、悪い夢を見ているような、絶望的な状況が連続して起きるんです。

その後も、夢か現実がわからないようなトンデモない展開が続いて、最後のオチまで予想外なことしか起きないんですが、これこそがアリ・アスター映画だなと思いました。

この『ボーはおそれている』という作品は、A24というスタジオが製作・配給を手掛けています。ハリウッドでは比較的小さな規模の独立スタジオですが、個性の強い作品ばかりを生み出し、いまやアカデミー賞の常連となっています。

ハリウッド映画といえば、予算をたっぷり使って、コミックやゲームなどの既に人気のある原作を使い、有名俳優やスタッフを揃えて、宣伝も広告にもお金をかけて、世界中で売れるような作品を製作するというのが主流なわけです。


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