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UPDATE|2024/03/09

『ブギウギ』福来スズ子と茨田りつ子、対照的な二人を結び付けた”共通点”とは

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現在放送中のNHK連続テレビ小説『ブギウギ』(総合・月曜~土曜8時ほか)。ブギの女王・福来スズ子(趣里)の人生が描かれている『ブギウギ』だが、ブルースの女王・茨田りつ子(菊地凛子)の存在感も凄まじい。二人は対照的でありながらお互いを認め合い、良きライバル・良き仲間として関係を築いている。スズ子とりつ子がどのようにして心の距離を近づけていったのか、これまでの二人を比較しながら考えてみたい。

【関連写真】放送後、話題となった茨田りつ子(菊池凛子)『別れのブルース』歌唱シーン

スズ子が初めてりつ子の存在を意識したのは、第5週「ほんまの家族や」でのこと。たまたまラジオから流れてきた「別れのブルース」に心惹かれ、りつ子の歌声の虜になったのだ。その後、羽鳥善一(草彅剛)を介して初対面を果たすも「下品に歌を歌うお嬢さん」「お芋さんみたいなお顔じゃない」と早速、りつ子節の洗礼を受けたのだった。

スズ子にとってりつ子は歌手としての先輩であり、ライバル的な存在。だが、二人はいつの時代も全く異なるスタイルで舞台に立っていた。りつ子は舞台の上にただじっと立ち、佇まいと細やかな表情で歌い上げる。一方でスズ子は全身を自由に動かし、表情を変えながら舞台の端から端まで歌い踊るスタイルだ。歌劇団出身のスズ子と音楽学校出身のりつ子(モデル・淡谷のり子は音楽学校出身)という違いが現れている部分でもある。

また、戦時中の二人も実に対照的であった。日中戦争が始まった頃の日本はとにかく贅沢が禁止されていた。それはエンタメも例外ではなく、スズ子が所属していた梅丸楽劇団でも、派手な演目や演出、演奏は全て取りやめになった。スズ子は警察に「つけまつげを取るように」「衣装は地味に」「三尺四方からはみ出すな」と指導され、しぶしぶながらも従っていた。楽曲も「アイレ可愛や」といった国民に寄り添う歌を歌うようになり、時代に従順していたように見える。

反対に、りつ子は警察の指導に全く従わなかった。「これは戦闘服です」と派手な衣装や化粧を貫き、軍歌も一切歌わない。ステージには豪華なシャンデリアを並べ、自分の楽団を引き連れて最後まで自身のスタイルを崩すことはなかった。その悠然とした姿に、警備していた警察官すらもうっかり惚れ惚れとしていたほどである。

もう一つ、二人の違いがよく分かるエピソードがある。慰問先で愛助(水上恒司)と出会い愛を深めたスズ子は、愛助の母・トミ(小雪)から、「結婚をしたいなら歌手を辞めろ」と条件を突き付けられた。愛助や善一から反対されるも、スズ子は「ワテ…歌手、辞めようかなあ」と言い出したのである。結局、スズ子は善一の説得で歌手を続けることを決断したが、この時のスズ子は結婚か歌かでかなり揺れていて、本当に歌手を辞めてしまいそうな雰囲気をまとっていた。

一方でりつ子は、10年前に子どもを生んで以来、ずっと田舎の母に預けていることをポロッと告白。大切な我が子と離れて歌に人生を捧げたりつ子と、家族のために歌を捨てようかと考えたスズ子。どちらが正解・不正解というわけではなく、それぞれが強い意志を持って”家族”と”歌”に向き合っていることが伝わってくるエピソードであった。

AUTHOR

音月 りお


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