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UPDATE|2024/02/13

“八嶋智人無双”が炸裂『不適切にもほどがある!』が鮮やかに描き出す昭和と令和のコンプラ

『不適切にもほどがある!』公式HPより



八嶋智人のやる気はそっちのけで、番組のプロデューサー栗田(山本耕史)は堤ケンゴの四つ股報道(本当は六つ股)に頭を悩ませており、とにかく差し障りのない進行に努めている。だがだんだんとパニックに陥って、「カニクリームコロッケの中身がトロトロ」「稲庭うどんの食感がシコシコ」という感想コメントすらも「何かエロい」と気になってしまい、SNSで炎上する前に謝罪コメントでお茶を濁そうとする。コンプラにがんじがらめなのだ。

一方、昭和の人気番組「早く寝ナイトチョメチョメしちゃうぞ」のMCを務めるのは、女性のスカートのなかから登場することでお馴染み、Dr.ズッキー(秋山竜次)。もっこり青年隊とポロリっ子倶楽部による「勝ち抜き食い込み相撲」など(クドカン、よくこんな名前思いつくな…)、とにかく下らないお色気ショウが繰り広げられる。

昭和と令和の価値観を相対化させるのが、このドラマの鉄板テンプレート。今回もミュージカル仕立てで、「セクハラのガイドラインはどこ?」という疑問が投げかけられ、思いっきりクイーンの『Somebody to Love』をパロった曲に乗せて、市郎が「相手を自分の子供だと思えばいいんじゃないか?」とひとつの提案を示す。

だが、この問題に対して明確な解答を指し示すことが、宮藤官九郎の狙いではないだろう。残念ながら自分の子供であっても、強権的なふるまいはあり得るからだ。その狙いは、睦実が第1話で「だから話し合いましょう、今日は話し合いましょう」と歌ったように、異なる価値観を持つ者同士が徹底的に対話を重ねることで(古い=悪、新しい=善という二元論を飛び越えることで)、より良い未来が築けるのではないかとする提言なのだ。

ちなみにこのドラマ、第1話のタイトルが「頑張れって言っちゃダメですか?」、第2話が「一人で抱えちゃダメですか?」、第3話が「可愛いって言っちゃダメですか?」と、最後が疑問符で終わっている。この感じ、明らかに山田太一による名作ドラマ『ふぞろいの林檎たち』を意識したものだろう。「XXXはダメですか?」という疑問を投げかけ、市郎というキャラクターを触媒にしてひとつの方向性を指し示す。そのスタイルは、第4話目以降でも引き継がれることだろう。

【あわせて読む】『不適切にもほどがある!』が突きつけた、“働き方改革”という建前と現場で働く人の本音
AUTHOR

竹島 ルイ


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