FOLLOW US

UPDATE|2024/02/11

邦画は洋画と比べて若手俳優主演が多いのか? その背景には労働組合の存在

『キングダム 運命の炎』ブルーレイ&DVDセット(通常版)

海外映画と日本映画の違いで印象的なのが、主人公の年齢。アメリカでは子供向けのマーベル作品でも『アイアンマン』や『アントマン』などは中年男性が主役。一方で、日本の作品は若者が主役になる場合が多く見受けられる。今回、筑波大学人文社会系助教を務め、洋画事情に精通している渡部宏樹氏にその理由を聞いた。

【関連写真】竹内涼真が主演を務める『劇場版 君と世界が終わる日に FINAL』メインビジュアル

まず、去年の日本での映画興行ランキングトップ10から振り返ろう。(興行通信社調べ)

1位『THE FIRST SLAM DUNK』(157.4億円)
2位『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』(140.2億円)
3位『名探偵コナン 黒鉄の魚影』(138.4億円)
4位『君たちはどう生きるか』(86.2億円)
5位『キングダム 運命の炎』(55.7億円)
6位『ミッション:インポッシブル/デッドレコニング PART ONE』(54.3億円)
7位『ミステリと言う勿れ』(47.5億円)
8位『劇場版TOKYO MER 走る緊急救命室』(45.1億円)
9位『映画ドラえもん のび太と空の理想郷』(43.4億円)
10位『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』 (43.1億円)

アニメが5作品ランクインして、実写映画は『キングダム 運命の炎』、『ミッション:インポッシブル/デッドレコニング PART ONE』、『ミステリと言う勿れ』のみ。『ミッション:インポッシブル/デッドレコニング PART ONE』は現在61歳のトム・クルーズが主演を務める一方、『キングダム 運命の炎』は山崎賢人、『ミステリと言う勿れ』は菅田将暉とどちらも若手俳優が主演を務めていた。

ヒットした映画に限らず、邦画は洋画と比較すると若手俳優が主演するケースが多い印象。もちろん、阿部寛や西島秀俊といったキャリア十分の俳優が主演の映画はいくつも存在するが、そのイメージは根強い。筑波大学人文社会系助教を務め、洋画事情に精通している渡部宏樹氏に話を聞く。

まず渡部氏は邦画では若手俳優が起用される傾向があるのかについて、「邦画と洋画の主演俳優の年齢などをチェックしたわけではないので、何とも言えないところではありますが」と答えつつ、「そういう印象があるのは労働組合の存在が大きいように思います」と話す。

「アメリカでは約16万人の俳優が加入する労働組合『SAG-AFTRA(全米映画俳優組合)』があります。SAG-AFTRA は2023年7月から11月まで、報酬の引き上げや人工知能の利用制限などを訴えるストライキを実施して、その様子は日本でも大きく取り上げられました。SAG-AFTRAが存在するからといって年齢・性別・人種に偏りなくフェアに仕事が行き渡っているわけではありません。非白人の役に白人をあてるホワイトウォッシュが問題になったのは記憶に新しいことです。

しかし、キャリアを重ねた年長の役者にも仕事がまわる仕組みになっていることも事実でしょう。日本でも『小栗旬さんが労働組合を作ろうと動いている』という報道もあった通り、今後はキャスティングの傾向にも変化が見られるかもしれません」
AUTHOR

望月 悠木


RECOMMENDED おすすめの記事