さらには、声優のギャラシステムも乗り越えなければいけない壁のようだ。
「先程アニメの制作費が高騰していると話しましたが、音声制作、つまりは声優周りのギャラは一切上がっていません。仮に何人かが『ギャラを上げてください』と声を上げたところで、キャスティング側からすれば他の声優を起用すれば良いだけ。耳を貸す必要はありません。各声優事務所が一枚岩になって『音声制作費を上げてくれ!』と声明を出せればベストですが、そのハードルはとても高い。ギャラを上げにくい状況下のため、多くのアニメを受け持ってモーレツに働かざるを得ません」
声優がワークライフバランスを意識して働き続けることが難しい背景が伺え、「基本的には声優は個人事業主ですので、業務量は自分で良くも悪くもコントロールできるため、『たくさん働きたい』と声優側が強く望めば止めることは難しい。お恥ずかしい話、今現在考えられる具体策はありません」と答えた。
最後にこういった現状が続いた際にどのような弊害が将来的に生じるのか聞くと、「声優の心身の健康も問題視すべきですが、やはり声優間の仕事量の格差が開くと、食える人が偏ってしまい多様な人材が不足します。例えば、高校生役を30~40代の声優が務めるケースはよく見られますが、こういった傾向が今後加速する可能性が高い。それではアニメのクオリティを維持することが困難になりかねない。世界に誇るアニメというカルチャーの質を担保するためにも議論されなければいけない状況です」と締めた。
平岡氏の話を聞くとかなり複雑な問題であり、解決策は簡単には導き出せないことがわかった。アニメーターが酷使される現状が度々議論に上がるが、声優も過酷な環境で働きながら、私達の生活を彩ってくれている。アニメ業界の働き方を真剣に考え直さなければいけない段階に来ているようだ。
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