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UPDATE|2023/07/13

『RRR』を抜き2022年インド映画界のトップに君臨、6時間予告編を観ているような衝撃作が公開

『K.G.F:Chapter1』

2022年に公開されたインド映画の中で年間興収1位を記録した『K.G.F: Chapter 2』。日本でも英語字幕上映という限定的な上映であったにも関わらず異例のヒットとなったが、この度日本語字幕付きで、さらに前作の『K.G.F:Chapter 1』もまとめて7月14日に緊急公開が決定した。

【写真】『K.G.F:Chapter』シリーズ1&2場面写真

今作は南インドのカンナダ語映画であるが、ヒンディー、タミル、テルグ、マラヤーラム語などでも吹替え版が制作され、全インド映画市場の中でトップに君臨した作品だ。

そんなモンスター級シリーズの監督を務めるのはプラシャーント・ニール。

プラシャーントの初監督作品『Ugramm』(2014)を観たことがあればわかると思うが、この監督の手法は、かなり独走的。『RRR』の映像が常にクライマックス状態といわれていたが、今作も常にクライマックス……というよりも、全編が予告編のように編集されていると言った方が適切かもしれない。

今回上映される『K.G.F』シリーズでは、その手法がついに極まったというか、徹底的に開き直っている。演出やカメラワーク、音楽の使い方まで…チャプター1、2合わせると、約6時間予告編を観ているような感覚になる。

曲も、『Ugramm』からプラシャーント作品の音楽を担当するラヴィ・バスルールの重圧なサウンドに、サントシュ・ヴェンキーやサチン・バスラーといったカンナダ映画音楽界の中でも渋い歌声を持つアーティストたちが参加。よって、見事なサウンドトラックが完成した。

全体的にざっくりしている部分が無いわけではないし、主人公以外の物語があまり描かれていない。とくにリナとラジェンドラの親子の関係性が全く描かれていないのは、めんどうな人間ドラマ部分を勢いでごまかしているよう。ただ、前提として今作は娯楽作なのだから、それも許容範囲といったところだ。

細かい人間ドラマをそぎ落としているのに、それでも情報量が非常に多く、さらに圧倒的な画力から目が離せなくなってしまう本作。

ロッキングスターといわれているヤシュの圧倒的なカリスマ性も加わり、正に無双状態で、駆け引きや緊張感が必要とされるギャングの抗争を描いているというのに、ハイテンションで駆け抜けていく、まるで『マッドマックス』と『スカーフェイス』が混ざり合ったような作品なのだ。

かねてから近年のインド映画はハリウッド映画、特に『マッドマックス 怒りのデス・ロード』(2015)の影響が強く出ているのだが、今作を観ると改めて実感させられる。

また、カナダのドラマ『ヴァイキング 〜海の覇者たち〜』に登場するラグナルからインスピレーションを受けたキャラクター、アディーラ(サンジャイ・ダット)との対決はバイオレンスコミックそのものだ。 


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