――なるほど。それが今の仕事にも繋がっているんですね。
本橋 『出禁の男』では、たくさんの関係者が喜んで取材を受けてくれたんですが、皆さん、伊藤さんのことを語りたいんですよね。それこそ伊藤さんの人生をすり合わせることで、自分の青春を語りたいんですよ。
――『全裸監督』のように、『出禁の男』も映像化したら面白いですよね。
本橋 いいですよね。キャッチコピーは「地上波をなめるなよ」で、それをライバルの動画配信でやると面白いんじゃないですか(笑)。地上波はなんだかんだ言ってすごいんですよ。最近、規制が多くて立ち場がないけど、底力はあるし、元気のない地上波がまた存在意義を知らしめてほしいです。
――コンプライアンスが厳しい世の中では、テリーさんも以前のような番組作りはできないと思いますが、それについて何か仰っていることはありますか?
本橋 確かに手枷足枷をはめられたような制約を受けていますけど、それを伊藤さんは愚痴らないんですよね。あくまで与えられたリングの上でやるという矜持があるんです。ホームランを打たれないように球場を広くするのではなく、自分のピッチングを磨いているんですよね。だからルールを改正されても嘆かない。村西とおるだって全盛期はビデ倫を尊重していたし、ルールの中でやっていましたからね。
――テリーさんや村西監督の功績は記録に残されにくいものですが、本橋さんはそれを意識して、『出禁の男』や『全裸監督』を書いたところもありますか。
本橋 そうですね。記録されざる文化をせめて活字で残していきたい。忘却は第二の死ですから。