――どのように現場では役割分担をしたのでしょうか。
岩淵 渡辺さんは合宿中に候補生と個人面談をされるんですけど、そのときの会話を山下さんがメモっているんです。そのメモを参考に、この子にはこういう話を聞こうと決めて、宮地君と山下さんは候補生を中心に、僕はWACKの現役メンバーを中心に撮影しました。最初はそんな感じで進めて、徐々に『らいか ろりん すとん』の中心になった二人の候補生が目立ってきたので、宮地君は二人の物語に感情を入れて、僕は(セントチヒロ・)チッチさんを中心に現役メンバーを引きで見て、山下さんはさらに引きで全体を見ているような構図でした。
宮地 最初の3日間は、撮影してみないと分からない部分も多いですからね。あと今回の大きなルールとして渡辺さんには直接インタビューをしないというのを決めていました。
岩淵 前作も前々作も、渡辺さんにも密着をし、様々な状況でお話を聞いていました。そうすると渡辺さん中心のオーディション合宿という見え方になってしまうんですよね。それとは違う描き方をすれば、また違った切り口になると思ったんです。
――山下監督のメモにはどういうことが書かれているんですか?
岩淵 渡辺さんは、上手くいってる子には「このまま頑張れよ」と言うんですけど、上手くいってない子は自信がなかったり、歌やダンスが下手だったりとポイントが明確になってくるので、そこをメモしています。
――以前から山下監督はメモを取ってたんですか?
岩淵 取ってました。こういうインタビューでも、ライターさんは下調べをしないと何も聞けないですよね。それと同じで、山下さんも現場で情報を収集して、その子が話をしやすい話題だったり、テーマだったりをリサーチしながら進めるんです。山下さんの本職であるAVの世界も、女優さんの面接をして、性体験や性癖を聞いた上で撮影に臨みますしね。山下さんのAVの現場ってフローチャートみたいに「この選択をしたらこうなる」って誰にも見せない台本があるんです。
宮地 フローチャートがあるんですか(笑)。
岩淵 たとえ現場で異常なことが起きていても、山下さんの頭の中のフローチャートでは想定の範囲内なんです(笑)。
宮地 それはすごいな。