弥生の苦渋の決断を告白された夏は、「3人が無理なら、どちらか選ばなきゃいけないなら、海ちゃんを選ぶ」と声を震わせながら答える。正直、「海ちゃんを選ぶ」という強めのワードの選択には、肝心なところで相手に配慮ができない夏に苛立ちも感じてしまう。いやマジで、そういうところだぞ、夏!
だが思えばこのドラマは、「選択」の物語だった。自分の意思で「選択」することを避けてきた主人公が、今回ははっきりと「選ぶ」という言葉を口にしたのだ。誰よりもまず相手のことを第一に考えて、どっちつかずの言動に終始していた夏が、「海ちゃんを選ぶ」という発言をしたこと自体、『海のはじまり』という物語がゆっくりと時間をかけて辿り着いた、ひとつの帰結なのだ。
ふだんはback numberの「新しい恋人達に」が流れるなかでエンディングを迎えていたが、今回の第9話では得田真裕による美しいスコアで幕を閉じる。それもまた、夏の成長を表す演出的な意図なのかもしれない。「夏と弥生のおわり」が描かれることで、「海のはじまり」が近づいている。
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